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スクアーロさんの名誉を挽回すべく、あのですねとルッスーリアさんの感心を引いて話の口火を切る。身振り手振りで、ここまでの経緯を簡単に説明をする。何故か私が追われていた事、スクアーロさんに助けられた事、やむなく二人でどうにかして敵から逃げ出した事。ルッスーリアさんは、上品に紅茶を口に含みながら黙って私の拙い話を聞いてくれていた。機嫌の悪かったスクアーロさんも私が口を開いている間はずうっと黙っていたので、私の説明は彼にまずまずの及第点は貰えたらしい。
話す内により鮮明に蘇ってくる、あの惨状。よくあの時の私は平気で居られたものだ、いや全然冷静ではなかったけれども。スクアーロさんと共に戦った(って言って良いのか?)時の私はまるで自分じゃないみたいだ。人間死ぬと思えは何でも出来るのだなと改めて思う。言葉を捻り出すために記憶を手繰り寄せていた私が、ある記憶のワンシーンで一瞬言葉を詰まらせてしまった事はルッスーリアさんには気付かれなかった。それはあの、私が本当に久方振りに言葉を発したあの瞬間。あの絶叫を言葉と称してよいのかは分からないけど、狂った様に喚く私に強引に施されたスクアーロさんからの――キス。今思えば、非常事態だったとは言え私はこの、美しい人と……。思わず赤面してしまったけれども、そこらへんは普通を繕って言葉を濁しておいた。誰が、わざわざそんなこと話すか。私を黙らせるためとはいえ、行きなり唇を奪われて、他に方法なかったのかよとも思うし、それに……それに……あんな………大人の…!!一応、ファーストってやつだったのに……!今、ソファーに踏ん反っているスクアーロはそこについては全く触れて来ず、全く素知らぬ顔なので、慣れているのか知らないけど彼にとっては気にするほどの事でないことは確かで。なんと言いますか………私も初めては好きな人と☆を夢見る少女なので……落ち込む…。まあ、それでも助けて貰った事は本当に事実だし、凄く恩を感じている。スクアーロさん……案外優しかったし。てか、一番考える所がそこって…なんか私ずれてないか?!

私の話が一通り終わると、ルッスーリアさんはふうん大変だったのねぇと意外にも本当に興味深そうに返してくれた。

「それにしても、スクアーロ
あんたが人助けなんてどーゆー風の吹き回しかしらん?
明日槍でも降るんじゃないの〜」

ルッスーリアさんは心底面白いという様にスクアーロさんに話を振る。

「ちげぇ、勘違いすんじゃねぇ」

スクアーロさんは不快で仕方ないと寝転がったまま、掃き捨てる。

「いきなり先に攻撃仕掛けて来やがったから、切ってやった
そうしたら偶然コイツがいた、相手が厄介だったから利用した
それだけだぁ」

「あらぁ〜?
ならこの子そのままそこに置いて行けばよかったじゃない〜
後生大事に持って帰って来ちゃって」

ねーと私に同意を求められても困る。なんて怖い事言うんだルッスーリアさん…私に死ねと…そういうことか…!?

「んも〜、そんなこと偉そうなこと言っちゃって
肝心なところでこの子に助けられられちゃあ、世話無いわよ」

「あ゙ぁ…?」

怒るるスクアーロさんにしれっと答えるルッスーリアさん。険悪なムードになって来た。
私は慌てて話に横やりを入れる事にする、いや実際ずうっと疑問に思っていた事なんだけど。

「あの、教えて欲しいんですけど、
私達を追って来た黒ずくめの男の人たち
私にはだけは見えて、スクアーロさんには全く見えていなかったらしいんですけど……実際に人はいたのにまるで透明人間みたいに…これは……後、その時、スクアーロさんが言っていた、げんじゅつって………」
「違うわ
あなたが見えて居たんじゃない、スクアーロが見えなくなっていたのよ」
「は?」

答えは反って来たけれどもその答えの意味が分からない。自分中心に考えちゃダメよ、とルッスーリアさんに諭されて、意味も分からず少し自分が恥ずかしくなった。
ううんと唸りながらその言葉の意味を考えていたけれど、皆目見当が付かない。
すると、私にイラついたのかスクアーロさんがごろんと体を横に向けて、あの迫力のある顔を私に向けた。さらりと艶やかな銀髪が一房床に落ちて、思わず目で追ってしまう。お風呂できちんと流したのか今はもう赤は付いていなくて、純粋によかったなあと思う。

「オレは奴等の術中にまんまとハマった……ムカつくことにな!!
だがそのガキはどういうカラクリか掛からなかったらしい」

ルッスーリアさんが、「掛からなかったのは子供だからね、ウチにはそうゆうちびっこいのもいるし」とスクアーロさんに付け足すが(凄く失礼な言葉を聞いた気がするが取り敢えずスルー)やっぱり意味が分からない。というか、まず、まず――――





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