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いろいろ考える事が多すぎて、(というかアレクさんが怖すぎて)人の血がついて気持ち悪いとかの嫌悪感やら、人が死んでしまった事への罪悪感とか真人間としての感情が頭から見事にすっぽ抜けている事に気が付かない私。



多分、この時既に私は自分の周りの変化や出来事で少しづつ少しづつ、ずれてきていたのだ。

お父さんお母さんは悲しむかも知れない。
でも私にとっては必要な変化だったと思いたい。


いや、私はそう思っている。





パニックで一人部屋をぐるぐると歩き回っていた私は、先程まで手を掛けていた扉が静かに開かれた事にワゴンが現れるまで全く気がつかなかった。相当驚いた。

入室して来たのは、ふりふりのかわいいエプロンドレスを来た女性だった。若くて美人だ、三十代ぐらいだろうか。髪をキチッとパレッタで束ねしゃきっと背筋が伸びている、いかにも出来る女性と言う感じ。
女性は私に気付くと、表情のないままでドロドロの服の私を見た。が、直ぐに興味ないとばかりに私の横をすり抜け、部屋の清掃をし始める。
……無視ですか、普通人がいたら話かけるとかしないか?私ただでさえこんな尋常じゃない格好なのに……。

取り敢えずはここは何処か、私は何故ここにいるのか聞かないとどうにもならない。そう思って、まず無意識にマイスケブとペンを目が探している自分に苦笑いが漏れる。もう、自分には必要ないのだった、もう私にはこの声がある。
そういえば手に持っていたはずのスケブもいろいろ私物も入っているポシェットも何も今手元に何もない。逃げている間に落としたのだろうか。
あのオレンジ色のポシェットはディーノさんが私が私物が持ち歩ける様なバッグが欲しいと言ったらかってきてくれたコレクションの一つで、最近私の必需品にレギュラーいりしていた。ディーノさん曰く隅に入っている白い花柄のアップリケがポイントだそうだ。
使い勝手が良く結構気に入っていたのに…。

掃除やベッドメイクを施している所を見るとここのメイドさんらしい女性はただいまも私を完全にシカト状態。美人な上、無表情でテキパキと仕事をこなす姿は好ましいが私は完璧に彼女の仕事に邪魔物扱い。私の知っている気さくで気の良いメイドさん達とは偉い違いである。


「あの、お仕事中すみません
ここは何処なんでしょうか」


どう見ても日本人ではない彼女に取り敢えず口に慣れないイタリア語を頑張って喋ったが、多分発音は相当酷かったと思う。

「本部屋はS・スクアーロ様の仮眠室となっております」

まさか返答してくれるとは思わなかった。やっと会話をしてくれる気になったのかと期待を込めて彼女を振り返るが、手を休めようとする様子は全くない。


誰だよ……そんな名前聞いた事ないよ…第一、現在地を聞かれて、普通そんな風に答えるものだろうか。場所を私は聞いているのに……

「私、なんで自分がここにいるのか……サッパリで…」

又もやシカト。

「じゃあ、その…すぺ…るびさんは何処にいらっしゃりますか
会わせて頂きたいのですが」

更に無視。まるで私一人痛い奴みたいではないか。散々話し掛けて分かった事は彼女に私に事の次第、詳細を説明する気は全く無いということだった。部屋の中をあくせく動き回るだけの彼女に、もう自分が何をしたら良いのか分からずに途方に暮れる。
あ、何か泣きたくなって来た。これだけ存在を無視されていると、自分が彼女に相当嫌われているんじゃないかと思う。まだ顔を付き合わせて十分のお付き合いだから私の何処がそんなに気に入らなかったのか、見当も付かないけど。



彼女が突然私の手首を掴んだのは、それから又十分ほど私が馬鹿みたいに部屋の隅で作業の行われる様を眺め続けた後の事だった。
私は咄嗟に腕を引く力に踏ん張り抵抗するが、女性の細腕では考えられないほど強く握り込まれて私を部屋の奥へと引きずってゆく。痛みに顔が歪み、さっきとは違う意味で泣きたくなった。でも、彼女は全く容赦がない。もう………一体なんなんだ!!
部屋の奥にあった扉の向こうにあったのはまさかのバスルームで、今度は無理矢理広い脱衣所で私の服を脱がし始めた。お、おい!最高に意味分からない………何の権利があって人の事勝手に情けない格好にさせてるんだ!!!
ここだけは人として絶対譲れない、譲ってはいけない。隙をついて、彼女の手を逃れてから彼女を睨みすえる。
すると、彼女の整った唇から耳を疑うような単語がこぼれた。



「部屋の中の汚いガキ、
は念入りに掃除を行う様に言いつかっておりますので」


ガっ……?!掃除………!?はあっ………?


それから無理矢理押さえ込まれて、風呂場に連行。熱いシャワーをぶっかけられて、全身くまなく洗われた。体中、彼女の手によって!!!体にこべり付いた赤が湯に溶けて流れてゆくのが分かった。

血で気持ちわるかった体はスッカリ綺麗になったけど……………………自分のうら若き乙女としての何かを……………失った気がする………………

うううぅ…………





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