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目覚めて何を思ったかと言うと、こんな事前にもあったなあということと、お腹が空いたなと言う何とも凡俗的な思考で自分でも情けない。


ぼんやりとした頭で重い上半身を起こし、意味もなく空を見つめる。起き抜けはいつも思考が繋がらない。頭に手をやり取り敢えず…何かを考えなくてはならないはずだ。

えーとえーと…なんだなんだ…………………まず………始めに……………ああ!まず、ここが何処かって事だ……!!



取り敢えず、首を捻って視線をぐるっとに一周させる。


室内、そして部屋、そんでもって広い。付け足すなら豪華、お金持ちの家っぽい。



そして私はどんな状況にいるかというと、何人掛けかの高そうなソファーの上に横たわっていた。何故高級かわかるかというと、張ってある素材が手を滑らすとベルベット並みに(良くわからないけど)滑らかで、フカフカだったから。そして精巧に彫り込まれた木製のテーブルと部屋にはそのた日常に必要そうな家具一式。全部が全部贅をつくすしている意外は(広さは比べ物にならないが)私の部屋とパターンは同じ。ここは誰かの資質なのだろうか。部屋は勿論私意外誰も居なくて、凄く静かだ。



………だから…なんか前にもこんな事があった気がする……。脳の中の記憶を懸命に掘り起こそうとする。


眠りから目を覚ますと見知らぬ豪勢な部屋…確か……
そうか、私が、ディーノさんのお屋敷にいつの間にか居た時と同じだ!!それからドジを踏んで……



では、私はあの屋敷に帰ってこれたのか……?あの時と同じように、私が魔法の様に瞬間移動して。
この考えは直ぐに違う事がわかる。私はこんな部屋見た事はない……全部の部屋に入った事があるかと聞かれたら、あの膨大な数の室量だし、私室も大きな数を締めているしむしろ私の様な居候が入れる部屋は凄く限られていて当然かもしれないけど。

でもそれ以上にこの部屋の作りは、単純に趣味があの屋敷とは違うと思う。私の住む所はどこか慎ましやかで落ち着きがあるけど、ここは高級なのは変わらないけど派手でちょっとしつこい感じがする。だから、ここはあの屋敷ではないと思う。



じゃあここは何処だ、思考はまたそこに戻る。
取り敢えず、しょうがないので立ち上がりこの部屋から出て、誰かこの家にいる人を探そうと思う。


私は金色の重いドワノブに手を乗せる。
誰か、居ますように……!

そのまま腕を捻ろうと、何気なく自分の手の甲に目をやる…するとなんと、赤いものが擦れた様にベッタリと付着していた。

「…うっわ……!!」


思わず出していた右手を引っ込めて、目の前に掲げ凝視する。
私大怪我でもした……?でも痛みは全く感じない。

もう既に乾燥していて擦るとパラパラと粉になって取れた。

その下に落ちて行くさまを目で追っていくと、今度は自分の服全体が、どす黒、いや真っ赤に染まっているのが目に入った。



っっっ!!!!………………………私は馬鹿か………!!!!

自分の脳天気さ加減が本当に恥ずかしい。
何で忘れてたんだろう、眠りに入る前の散々な出来事を……!!
いや、むしろ忘れたくて、考えないようにしてたのか…。

自分の髪をヒステリックにかきむしる。髪までもろに被っていたみたいで所所カチッカチに固まっていた。本当………なんできづかなかったのか!!!




今度こそ、確かめるように記憶を起こしていく。
恐怖と、赤い赤い血の色匂い、そして、なびく、美しい銀色。


そういえば………。
まずこれを考えるべきだったのだ。

あの銀髪の人は何処に行ったんだろう。


途中から睡眠に入ってしまったから、あの後どうなったか分からないけど……………まさか、呆れてあのまま放置して、結局捕まって、私は今や囚われの身……ではないとは思う!!いや、思いたい!!ほら、私今普通に自由に動けるし、そうだったら縛ったりされてるはずだ!!!ハハハ!!

彼が心優しい人柄だと思い込む事にする。では、ここは………彼の家………?


ならば、今すぐ帰してもらわないと…………今は何時だ!!私はどれくらい呑気に寝ていた!!絶対心配をかけてる………と言うか私を業火のごとく怒っているに違いない……!!!不可抗力なんですよアレクさん……!


そこで肝心な事に気付いてしまう。


……この血まみれの状態で帰る訳には行かない……!!


洗面所でも、洗濯機でも、帰る前に貸してもらわなきゃ………!
でも、もう乾いてカピッカピになっているが、血の汚れなんて綺麗に取れるものなのだろうか。

帰りたいけど、帰れない帰りたくない………何この矛盾……!!!





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