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頭の中は何、何故、どうして、何より、怖い怖い怖い。
そんな私に眼もかけず、男達は拘束した事に満足したのか、私を縛り上げながらふざけた風に仲間内で話だした。

「っかしよー
マジでこのガキ一人にキャバッローネが動くって?
なんか嘘クセー」

「これは内部からの確かな情報だ
あのMr.キャバッローネが日本人のガキに随分入れ込んでるってな」

「はあー?!
けったいな趣味だなこりゃー
こんなチビを慰み物にってか!?
うわーエゲツねー」

「女に興味がないようだと聞いてはいたが………プクククッ
まさかの幼女趣味っ!!
やべーあの堅物のイメージズイブン変わったぜー」

「あーあー、かわいそーでちゅねー変態男に弄ばれて
俺達がきたからもう大丈夫でちゅからねー」


ぎゃはははと嫌らしく笑う男達に体が震える。駄目だ、この男達は正面な思考回路はしていない。私に向けられているのは、嘲りと嫌らしい視線のみだ。

「で、どーする順番!!
もっちろん俺が見付けたから俺からだよな!!」
「好きにしろ
だが、殺すなよ
死体じゃあ折角の人質の価値がなくなる」

「うおお、ラッキー!!
お許しでたー!」

「たーーっぷり可愛がってやるからな」

油ぎった顔を近付けて、頬をベロリと舐められた。気持ち悪さに背筋が凍り付き、咄嗟に顔を背ける。
すると耳からバチンという盛大な破裂音が響き、頭が真っ白になる。耳鳴りがして、後から頬がジンジンと痛む。
殴られたんだと悟った。
「ちゃんと言うことを聞けよガキ。
こうゆー時は、ありがとうございます、だろーが」



「うわーでたこの鬼畜!!!!
悪く思わないでね、お嬢さん
恨むなら跳ね馬を恨みな〜」

ガタガタと身体が尋常じゃないほど震えて……怖い怖い怖い……!!

誰か…誰でも良いから助けて……




その時だった。


突然、うわあとかぎゃああとか悲鳴が耳に入った瞬間、涙ににじんだ視界は赤一色に塗りつぶされた。



は?と重力にしたがって崩れ落ちた体に反して顔をあげると、

黒色が赤をまき散らしながら、舞っている。

綺麗………。

それの一連は神秘的な、神聖でとても美しく、時折見える銀色が、赤をより引き立てている。

純真な感動で泣くのも忘れてそれに見入ってしまった。




黒は一通り暴れた後、懐から何かを出してブツブツなにかを言っている。

気が付いたら周りが赤ばかりだった。
これは……何…?

生臭い……鉄臭い??

覚えがある、この匂いは………血……?

幻想的な時間は終わりを告げ、周りを見渡してみると……

さっきまで私を嘲笑っていた連中のみるも無残な…………四肢……亡骸……まだ反射のせいで目を見開いたまま身体がビクビクと脈打っている………。


そのグロテスクさに、地獄絵図に……………

私の頭はスパークした。



「…………あ…ぅ、
な…に………何、何なになに………」

喉がヒューヒューと音を立てる。


「……………………い……や………、
い………う…ぅ…うあ、ひぅ…いや…だ…いやだいやあ




いやああああああーーーーーー!!!!!!




何かも分からず、とにかく懸命に叫んだ、吠えた。

後ろ手に縛られた腕もギシギシと暴れる度に傷んだが、そんなのどうでもよかった。

自分の喉を震わせる事が止められない。私は壊れた警報機の様に悲鳴を上げ続けている。いつも声を出すのを渇望していたけれど、これは…………………あんまりだ。




革靴コツコツと足音が一定に響いて私の座り込んでいる場所に近付いてくる。

私の目の前でその黒は私を冷たい目で見下ろす。
怪しく光る眼光に獰猛な獣の姿を見て、私は後退りをして距離を取ろうとするが足はピクリとも動いてくれない。

黒一色のコートに方腕には剣の白。そこから赤がポタポタと地面にしたたっている。
そして、サラサラと揺れる長髪の色は…………輝く銀色だった。




この人なのだと。

あの惨状を作り出したのは、この目の前の男なのだと。

そう理解する。





とにかく恐怖にもうめっちゃくちゃな言葉にもならない叫びをその男に浴びせかけた。


すると、そのつり上がった目下を歪ませた。

私の前の赤の水溜まりに惜しげも無く膝を付き、私の頭を乱暴に掴んで、それで、




私の口は柔らかい、目の前の男の唇に塞がれていた




「―んッ、ふう……んんーー」


私の音は行き場を無くし、目の前の男によって飲み込まれる。
呆然と為されるがままになっている私を良いことに角度を変えられ、無理矢理生温い物を押し入れてきた。
それは口内を、歯列を探るような動きを見せる。ぬめぬめして、気持ちが悪い。鉄臭い、血の味が少しした。

私をただ貪る肉食獣。
それでも、目を逸らすことは出来ない、
私を射殺さんばかりの二つの瞳、透き通っていて…宝石みたいに綺麗だと場違いなことをボンヤリと考えていた。

好き勝手暴れていた舌が私のそれに絡まされた時、背筋がゾクッとして、ようやく抵抗をしなければと頭が働く。

いやいやと首を振れば、銀髪の男は私の唇を二三度食んでから顔を離した。

即座に袖で口を拭い見上げる。
休息に空気がなだれ込み、息が乱れる。自分が呼吸を止めていた事に初めて気が付いた。

男は濡れた唇を舐めると、

「これくらいの事でぎゃあぎゃあ喚きやがる………うっせぇんだよクソガキがぁ…
口を閉じろ、わかったかぁ……」

機嫌悪そうに睨まれた。






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