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「でも…まあ、よかったわね、アレクも
こんなにかわいい子がいて、気にかけてくれてる…………少し心配していたのよ
でも、ユイがいるからもう安心ねっ」
いやいやすごく適当に扱われてますから、私も石の上にも三年(?)てやつですから…!!でも、アレクさんの日常の中に私が少しでも入っているのは確かみたいだけど……体よい雑務処理係としてだけどね。
なことはないですよ、と渋い顔をする私に上品にクスクス笑い出すマリアさん。最高に意味がわからない……。
『もう、私戻ります 』
椅子から立ち上がりカウンター上に食器を下げてから会釈をする。
「あら、行っちゃうの
じゃあはい、頼まれてたものっ」
手渡されたのはパンに溢れた小さなバスケット。私はしばしばお持ち帰りのパンや水筒にスープなどを頼む。
「今日はコッペパンオンパレード!!」
エッヘンと説明をいれてくれる。被せられたハンカチーフから覗くツヤツヤのパンはまだ暖かくとても美味しそう。
―ありがとうございます!!
「出来たてだから、早いうちに食べてねっ………て、
ああああ!!!」
笑顔だったマリアさんに突然叫ばれた口をあんぐりとあげている。
なんか指さされてる…え、私変な事した…?
「も、もしかしてもしかして、もしかしなくてもおおぉ
それ、アレクのぶん……?
」
わななく声で違うわよねっと強く突っ込まれた。あれ、言ってなかったっけか…?そのつもりで毎回毎回頼んでいたんだけど……
そういえばアレクさんと接点がある事も知らなかったんだっけ…
マリアさんの反応がオーバー過ぎて少し怖いが、とりあえず、頷いておいた。
「今までのも……?」
も一つ頷き。
それに衝撃を受けたらしいマリアさんが暗い顔をしてしまった。
「……あたしはぁ、今までぇユイが食べてくれるんだと思ってぇ〜張り切って〜用意してたのに………まさかまさかよりによって…
ヤツの胃袋に収まっていたなんて……………!!!
」
よよよよよ…と泣く格好までし始めた。ええええ…そんなにいけない事だったの…まあ、貰った物をまた別の人にあげるなんてあげた本人は良い思いはしないよね……ああ、考え足らずだった…
「お昼もあたしの焼いたパン、食べたいと思ってるのかな、てすごい嬉しかったのに……ヒドいわヒドいわ…」
美女の涙にとてつもない罪悪感が引き出された私。なんつー失礼なやつなんだ私は……折角、マリアさんが私のためにしてくれていたのに、それを……本格的に落ち込んできた。
私までブルーな気持ちになった。傍から見たらさぞ滑稽だったろう、朝の清々しい気分は皆無である。
私の肩を落した様子にえ、と気付いたマリアさんが慌てて、冗談よ全然気にしてないわそんなのユイが決める事だものねっとフォローしてくれた所で、奥からおーいとマリアさんにお呼びがかかった。
あ、私も行かなくちゃ、誰か医務室に訪れてるかもしれないし!!
マリアさんの邪魔をしても悪いのでそそくさと帰ろうとすると、
「あっそうそう、アレクのところにいるなら伝言頼まれて欲しいのっ」
「あなた、ウチのボス、モチロン知ってるわよね
金髪でなかなかいい男の!」
は、
「最近、医務室に入り浸りらしいじゃないーどうしたのかしら、そんな何回も治療しなきゃならないほどの大怪我したのかしら?あ、もしかして病気とか…!!
あ、そしたら絶対顔見知りか……」
ちゃんと知ってますよ、いつの間にか妹になっちゃいましたもん
「もしあったらでいいんだけど、最近来ないけどどーしたんですかってたまには顔見せて下さいよって言ってくれない?」
「ここ一ヵ月ぐらい顔を見てないのよね……ちゃんと食べてるのかしら…」
私が最後に会ったのはそれ以上前だ。
『私、そんな人なんて知らないですから
すみません』
スケブに出来るだけ早く返答を書き込んで見せてから顔も見ずにさっさと部屋を出た。
それしか出来なかった。
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[mokuji]
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