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あれ、マリアさんは知らなかったっけ?そういえば、医務室にマリアさんが訪ねて来た事は一度もない。当たり前に私を知っている人達は事情も知ってると思い込んでいた。


「そうっ、医務室で寝泊まりしてるんでしょユイって…!!

医務室って言ったらヤツの根城じゃないっ?!



大丈夫なの!?と必死の形相で肩を掴まれる。
……大丈夫?、て何がですか?

「あんな陰険と四六時中一緒にいたんじゃ、こっちまで心が陰鬱になっちゃうわっ!
かわいいユイが害されてると思うと、あたしもう泣いちゃう……」

拳を振ってマリアさんが語る。
私は唖然としているだけだ。確かに……アレクさんが毒舌なのは認めるが、いつも顔を付き合わせていればとっくのとうに慣れてしまい今では良好な関係を築けていると思う。当たり前すぎて今さら文句を付ける人はいなかったし、まさかマリアさんに言われるなんて思わなかった。
ポケーッとしている私に焦れたのか、マリアさんは、んもう、と呆れたように問うて来た。


「よくわからないって顔してるけど、あたしのほうが不思議よぅ
あの性格だから、思った事ずけずけ口に出して媚びも全くしないでしょ
変にプライド高い人には結構嫌われちゃってんのよ
だからユイがねちねち言われるじゃないかと思って…
なんでよりによってヤツのところにいるのよ」


私はあの歯に着せぬ物言いは気を使わなくて済むから嫌いじゃないんだけどなあ、やっぱりそういう物だろうか、確かに世渡り上手には見えない。医療では信頼されているのかちょくちょく医務室に怪我人やら病人やら来るが、親しみを込めて進んで話しかける人は余りいない。……あれ?てかなんで怪我人があんなに多いんだろう?しかも怪我と言っても擦り傷だけでなく大怪我の人も結構いるし………二人処置を施した事は記憶に新しい。


「ユイ、ユイ?
大丈夫?やっぱり無理しちゃってるの…?」


心配してくれるマリアさんの言葉に思考を戻す。慌ててそんなことはないですよくしてもらってますとスケブに書き加える。更に、簡単な医療方法いろいろ教えてくれたりする旨を伝えた。彼は文句を言いながらも私に薬の説明など様々な事を教えてくれる。最近では簡易な物は自分がどんなに暇でもお前がやれと目だけで命令される。はいはいと私が患者さんを応対するのはいつもの事だ。


あら、そうなの?ユイだけには優しいのかしら…?
それともユイが大物なのかしら、アレクが苦手じゃないなんて…
でも、アレクが他人を自分の場所に置いておくほうがおかしいし……」

それは、ただ単に頼まれてただけの話で……渋々だと思います…嫌われてはいないでしょうが…
しかし、アレクさんはそんなに嫌われているのか……マイペースな人だもんな…この前も大量の薬の注文書処理を私にやっておいて下さいね、と押し付け自分はサッサとどっかに行っちゃったもんなあ…遠い目で思い出す。そんな傍若無人は日常茶飯事だし…これはこき使われている、というのだろう。
でも私にも出来る事があると少し誇らしい気持ちになる。それに、なんだかんだで信頼されている証拠なんだろうな、そうであったら嬉しい。




あの…
『マリアさんは
アレクさんが嫌いなんですか 』

つか、聞く前にさっきの言葉でよく思ってないことは分かるんだけど。わからないほうがおかしい感じだけど。やはり近しいひとが人に嫌われているのは悲しい。例えそれが、あのアレクさんだとしても……!!
恐る恐るスケブを見せると、マリアさんはそのパッチリとした目を更に大きくさせて、私を見た。それから、少しニッコリ笑うと、諭すように話してくれた。


「うんと、なんていうか……
あたしはね、人と人が触れ合いを大切にがモットーなのよ、それこそが日常が楽しくなると思うの
だから、たくさんの人たちのいっぱいの笑顔が見れる今の仕事が好きなのっ
なのにアレクって医者の癖に興味ありませんってあえて人を全く無視して、それでも平気ってさ
あたしには理解できないのよね」

少しへこんでいる私を悟ったのか真剣な表情で私に語ってくれる。
なるほど、明るい彼女らしい考え方だ。
ふう、と溜息をついてからまたいつものお茶目顔


「悪いヤツでは無いことはわかってるんだけどね、


私が文句言いたいのは………ヤツがとにかくムカつくってことなのよーーーー!!!

人の親切心をーーー馬鹿にしくさってからあのガキーー!!」

いきなり彼女の怒りのボルテージが上がった。
ああ、彼はどんな言葉で彼女の逆鱗に触れたのだろうか……





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