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「…………えっ?は、え、…へ?な、何を……いやいやいや、待て待て待て」



ちなみにディーノさんの背後には開け放たれた大きい窓だけ、退路はない。



「ちょ、待て自分で食べれる!!残したのは、確かに、悪かった、食うから、皿を貸せって!!な……?」



「おい、マジ勘弁……オレにも一応、ボスとしてのプライドっつーものがあっ……んぐっ!??」


ひたすらズイズイ差し出しても、いやいやとごちゃごちゃ言い募ろうとするので、問答無用にーーーー口に突っ込んでやった。蜜も垂れてきそうだったし。


「ー〜?!」

目を白黒させて口をパッと手で押さえた。ふっふ〜ん、してやったり☆妹というポディションにこんな甘ったるい事をする権利があるかなんて知ったこっちゃあない。ただ、ちょっと悪戯を正当化出来ればいい。


ーおいしいでしょう?

こくこくとうなずくディーノさんに、ならと次も掬って口に入れようとする。

「ん、サンキュ、あとは自分で食えるか…ら……」

本当食べれます?とカーペットを指差す。床には大量のきな粉が散乱していて、そこだけ黄色くなっている。

「……………」

それをみたディーノさんはスッカリ大人しくなって、黙り込んでしまった。


試しに葛餅を口に出すと、一時止まってからパクリと食べてくれた。それからは恥ずかしいそうに、でも素直に私からの行為を受けていた。素直に口をカパッとあけ、飲み込む姿は…………可愛い……!!生まれて間もない雛を餌付けしているようだ。恥じらって渋々といった感じがまたミソだ。ディーノさんはやっぱりこうでなくっちゃ!!!ふふふ、何となく優越感、と加護欲て言うか……目の前の従順な可愛い可愛い金色の毛色の大型犬をぎゅう〜〜〜と抱き締めたい……!!撫で回したい!!
あああ、可愛い可愛い可愛い!!


必死に衝動を押さえて、フォークで蜜と葛餅を寄せる様に掬い、口下、大きく開いた口へと向かいまーすっと………………………



ガチャッ
「ボス、やっぱりここに…………と、


お邪魔だったか……?」

ロマーリオさんだった。




「ハハハハハハッ、ボス、ユイに子供扱いされちまって」


大爆笑するロマーリオさんに合わせてフフフと微笑む私、離れて床に胡座をかく不貞腐れたディーノさん。
ロマーリオさんの言葉にうるせーよと言葉を漏らすディーノさん、髪から覗く耳が真っ赤なのが丸分かりですよー。まあ、あんなところを部下のロマーリオさんに見られたら落ち込むわーな。


「それにしても………ボスのあの顔……体よくからかわれて…ユイもやるなぁ……」


プクククとまだ忍び笑いしたがら私の背中をばしばし叩いた。ディーノさんは遂にだぁーもーうるせーうるせーと頭を抱えてそっぽを向いてしまう。


「あ〜笑った笑ったー
でもよかったみたいじゃねーか」

「……何がだよ……」


不機嫌そうにボツリと返すディーノさん。

「楽しそうじゃねえか!」

言葉はディーノのさんにかけていたはずロマーリオさんがちらりとこちらを一瞥して、ウインクしながら意味ありげに笑いかけてきた。私に振られても意味が分かりませんから!!にしても寒い行動も様になるダンディーロマーリオさん、これが大人の魅力ってやつか!!


「悪いがボス、もう時間だ」


「おう、もうそんな時間か」


ネイティブのイタリア語で先程から一転、二人は真剣な面持ちで話だした。速すぎて内容は掴めない。さしづめ、お仕事の相談なのだろうが、私はこういう時一人ぽかんと二人をただ見ているしかなくなる。とても…所在無い。

いつものことだ、保護してもらっている身の私が話に入っていったってなんの役にも立たない。でも、否応無しに感じる孤独、無力感。ああ、窓から入り私の髪を弄んで行く風が鬱陶しい。背中まで届く伸ばしっ放しの髪を腕に着けていた黒の髪ゴムで一つに括りながら軟らかい私専用のベッドに腰を落ち着ける。私の所持品、黄色いマイスケブとペン一式。微妙な気持ちなんておくびにも出したくなくて、スケブを広げて紙面を生め尽くす事だけに夢中なふりをする、無駄にプライドだけが高い私。ただ自分への言い訳の様なその行為が余計に空しい。





まだ話している……今日はやけに長いな、私の前では早めに話を切り上げようとするのに…



………
まだまだ話中なようだ…………上目でコッソリ様子を伺っている。


と微妙な違和感……に気が付いた…
え、なんかいつもと二人の様子が違う……真剣な声色はいつものことだけど、苛立っている…?いつもより言葉が乱暴だ…ディーノさんの眉間にも皺が寄っている……
いつの間にか忍んで見る事も忘れて、手は止まり、スケブと鉛筆をただ握りながら二人を凝視していた。





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