2


そうして、目を覚ましてみると、これだ。

うそだろう。

気づいたら、周りは見知らぬ広々とした部屋に。私は起きた恰好のまま座り込んでいた。状況を理解しようときょろきょろと忙しなく目と首が動く。部屋の中央だと分かったのは頭上に煌びやかなシャンデリアが天井から吊るされていたからだ。人生で初めて生でシャンデリアなるものを見たので、それが本物なのかは私には判断出来ないけど。

「何、ここ………」

大きくて閑散としているが、西洋の洋館を思わせる古めかしいごってりとした作り。ささやかででも豪奢な装飾の施されたベット、模様が彫り込まれた味わいのあるテーブル、壁に沿うように置かれている家具どれもが厳粛で高そうで私は思わず目眩がした。足元にある赤を主色の絨毯は細かい模様が施されていて、何気なく付いた掌を滑らせれば、手触りがさらさらふかふかで、これまた高そうだ。
19世紀初期のヨーロッパのお屋敷にでも迷い込んだみたいだ。

どうなってんのこれ、なにが如何なって、ん?

しばらくアホの様に状況が飲み込めずボーと座り込んでいた。
必死に考えて考えて回転の遅い私の脳みそが出した結論。うん……………これは正真正銘、夢だ。私は普通の女子高校生で、いきなり見知らぬ場所までテレポートする特殊能力など断じて持っていない。夢っていうのは支離滅裂でだいたい意味分からない内容だし、今回もそんな感じなのかも。きっとそうだ。

そうと決まったらここで呆けていても仕方がない。私は開き直った。普通なら私など手も届かないだろう絨毯を汚い靴で汚すのは申し訳ない……と思ったら裸足だった。というか服も部屋着のままだった。立ちあがり辺りを物色する。私の夢の中の産物をどうしようと私の勝手もの。
ぐうとお腹が情けない音を立てて空腹を訴えて来た。晩御飯のチキンライスはまだ食べていなかった、そう言えば。てか、夢でもお腹すくんだ……

 部屋を見回し、大体の配置の把握をした私の興味をそそったのは、隅の白いロココ調の大棚がだった。夢ってことで現実感が無くて、遠慮もない。躊躇もせずに取っ手に手が伸びる。恐る恐る引いてみると、精巧な作りの食器達が数部の狂いも無く規則正しく並べられている。オシャレな金のティースプーン、我慢出来なくなって直接手に取って眺めた。きれい……。

感嘆に気を緩めた次の瞬間、―――ガッシャン。

カップが指をすり抜け、重力に従って床へ落下。鋭い音をたてて砕け散ってしまった。

.

[ 2/114 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -