4





うぁあああ!!なんてこっ恥ずかしい!!最後の方は字がよれてさぞかし見え難いと思う。顔がカーと熱を帯びてきて、膝に顔を埋め、ついでにスケブを丸ごと隠す。この赤い顔もとりあえず恥ずかしくて見られたくない。わああ何書いてるんだ私、勢いあまってこんな事!でも、この言葉は言わなければならなかったと思うのだ、当たり前だろと思っていても、言葉にしないと伝わらないことはあると思うから。うーとうなだれていると、




「……そっか」

は?と膝から顔をあげるといつの間にか正面にはディーノさん。ーーーあ、優しい目。

「………そうか、そうかそうか…!!」

私と視線を合わせるように膝立ちになり、噛み締めるように同じ言葉を何度も繰り返して、今度はパアッと万円の笑みを浮かべている。そのまま、長い手を大きく広げてーーーーて、まずい!!



「そっか、ユイはオレのことが大好きか、そうか!!!」

大きい体と腕に体全体を包み込まれた。ぎゅううと腕には力が入り体を完全にホールドされる。体が密着して、ディーノさんの熱が布ごしに伝わり、なんで今日私薄着なんだろうと悔やむ。それにしても男の人の胸板って結構硬いのだな、とかそうじゃなくて!!とりあえず、いつものように抜け出そうとやんわりと暴れてみる。すると今度はすりすりとそのまま頬刷りをされるのでディーノさんがどんな表情をしているのかは分からない。視界の横に揺れている金糸が首筋をくすぐってこそばゆい。
も一度ぎゅっと抱きすくめられた後、ふと力が弛んだので怪訝に思っていると、はあ、と大きなため息を一つ。私を抱きすくめたまま私の耳元であんまり好かれてないと思ってた、と何かを吐き出すように呟かれた。……私の照れ隠しの態度がディーノさんを傷つけていたのだろうか、確かに激しいスキンシップに抵抗はしていたけど、結構好き好きオーラだして分かり易いと思うんだけどな私。変なところで考え過ぎでさあ、鈍いなあディーノさん。ああ、なんか抵抗する気を無くした……。捩っていた体から力を抜く。そこからはディーノさんに為されるがままだった。オレもユイの事大好きだと耳元で囁かれた時はこの役立たずな喉を呪った。私のほうが貴方のこと、もっともっとだいだいだいだい、大好きですよディーノさん。




にこにこにこ

にこにこにこにこにこにこ



あ、あの…………………

晴れて誤解も解け、再びゆっくり流れる午後の緩やかな時間。何を思ったかディーノさんは、スケブを見ない代わりにと半分冗談で自分を描いてくれと私に言ったのでそれを私は半ば強引に実行中。何度も言う様だが腕を披露するほど上手くもないんだけどなあ。従って、被写体に十分な目の前の生粋のイタリア人とスケブの紙面を目が行き来せざるを得ないのである。腕は慣れたもので自動的に鉛筆の黒鉛が紙上をシャシャッと黒く埋めてゆく。で、今とてもとても気になることは、真ん前の人の上機嫌具合である。椅子を逆向に跨ぐように座り、背もたれを抱いて顎をその上にのせ、寛いでいる。金が垂れるその顔が造りは整っているはずなのに、今はだらしなく弛みきっていて、笑顔が溢れまくっている。周りにお花が乱れ咲きという感じ。分かりやすいなあ。私もディーノさんが予想以上喜んでくれて嬉しい。


でもなんか面白くない。少しぶすくれてしまう自分、だって私だけ焦って、私だけ恥ずかしい思いをして、なんか納得できない。性格ひねくれているなあ。少し睨み付けてみても、いつもとは違ってヘラヘラ笑い返されるだけだ。ディーノさんの横の簡易机には、空の皿と……食べ残した残骸がある、勿論ディーノさんの……………………あ、良い事考えた……!!


一旦鉛筆をベッドの上に置き、ボールペンに持ち替えてページを一枚捲る。

『わたしは
でぃーのさんのいもうと
ですよね』

妹が分からないみたいなので『いもうと』と書き直してやる。

「ああ、当たり前だろ!!前にそう言ったじゃねーか!!お前はオレにとって可愛い可愛い妹分だぜ!
なんだ?どうしたいきなり」

笑いながら応対してくれた。ならば!!!



私は簡易机に歩み寄り、ディーノさんの残り物を手に取った。うわあ、良くここまでぐちゃぐちゃに刻んだな、でもまだ白い塊が、食べれるところは残っている。というか、ほとんどディーノさんの口には入っていないんじゃなかろうか、この分量だと。それを手にディーノさんの前にたった。フォークで皿の残りを寄せている間、ディーノさんは不思議そうに私の事を見上げている。
そのまま、にこり、と笑ってから(辛うじて)葛餅の乗ったフォークをそのまま、ディーノさんの顔前に突き付けた。

ーー瞬間、ディーノさんの笑顔が固まった。突き付けられたものと、私の顔とを目を見比べている。

ニヤリと口が弧を描いたのがわかる。




   あ〜ん



子供を諭す様に口で言ったら、意味をやっと悟ったのか突然わたわたと面白いほど慌てだした。





[ 32/114 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -