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ここ…どこ…?


まず目を覚まして浮かんだ疑問はそれだった。

私は確かに、自分の部屋にいたはずだったから。



自己紹介も含めて記憶を順に辿ってみる。
両親共に故人で天涯孤独の身です、とか、逆に何処かの資産家の御息女で眉目秀麗、文武両道、って訳でもないごく普通の私。中流階級の家庭に育ち、両親も健在で悩みは見た目が童顔で時々小学生間違われることくらい。まったく、失礼しちゃう。

だから今日も普通の学生の本分、学業に勤しまなければならない訳で、それなりに頑張って勉強して入った高校にもやっと慣れて来た時期。友達もそれなりに増えて、どっちかっていうと近々の中間テストよりも本格的になってきた部活の方に力入れちゃっている。中学では女の子同士でワイワイ騒ぐので精いっぱいだったというか、それが楽しかったので文句など有りようもなかったのだけど、次々と友達は彼氏持ちになっていて、その兆しも無いわが身にちょっと焦っていたりする。みんな、中学の頃は私には関係ないって顔していた癖に………。

夕日が長く影を作るまでくたくたになるまで打ちこんだ部活からやっと帰ってきて、「今日の晩御飯はチキンライスよー」と台所から顔を出す母に適当に返事してから、直ぐ二階の自分の部屋に向かった。教科書と部活道具の詰まった通学用かばんとスポーツバックとベッドの脇に卸して、重力に逆らわずに我が寝床に飛び込むとスプリングがぎしぎし音を立てて。薄い壁から激しいロックな感じの音楽がうっすら聞こえて来る。隣の部屋の弟は今日も乗りに乗っているみたい。よっぽど煩いと怒鳴りこんでやろうと思ったがそんな完全燃焼した私には余力も無かったし天の邪鬼な彼が余計音量を上げてしまうこと請け合いなので、我慢することにした。

くだくだとしていると嫌な事を思い出した。明日は大嫌いな数学の授業がある。出された宿題を後回しにするとそのまま寝てしまう自信が有ったので、観念してプリントを取り出して机につく。無い頭をフル活用して合っているかもわからない答えを一心不乱に書き込んでいる。私はなんて偉いんだろうと自分を心の中でほめた。だって、宿題ごときで褒めてくれる人物なんて自分以外に誰も居なもの。
ひと段落ついたなと手を止め、机の上の時計を確認する。小一時間時間は流れていて、もうそろそろ母の夕飯コールが掛かるだろう。

そうだ、そのとき、

ぐにゃり。

視界が歪んだ。
目を擦って、ぱちぱち瞬かせたが、次に、上半身が振り子時計の様に一定のリズムで上下して居ることに気がついた。目の前の置時計がアップになったり、小さくなったりする。
なんだこれ、眠い、とてつもなく眠い。言いようのない睡魔。
強すぎる欲求。
あれ、なんだろう。疲れてるのかな、私。
ごちゃごちゃ考えているよりも、私はとにかくもう、眠くて眠くて目も開けていられない。寝たい。目を瞑りたい。違和感を感じながらも、猛烈な睡魔には逃れきれず、そのまま机にばんと頭を突っ伏して、腕を枕にして瞼を閉じた。

視界は当然、真っ暗で何も見えなくなった。



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