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取り敢えず、自分の勉強の没頭具合に自分でも驚いている。完全にずうっと所謂缶詰状態だ。学校でだらだら英語などやっていたが、このぐらい最初からやっていればテスト百点なんて軽く取れると思う。やっぱりやる気の問題かなあ。自分でもディーノさんらが居ないと他の人との会話が成り立たないなんて情けないと思うから。
朝起きて昨日やったプリントを引っ張り出し、昼単語のテストをして、夜プレイヤーを永遠に流しながら眠りにつく、勉強勉強勉強、勉強の日々。
私もやれば出来るじゃないか。自分を褒めてあげたい。私、偉い。



「もう、今日はそのくらいにしておいたらどうですか…」

アレクさんがぬっと私の手元を覗き込んで着て、手元が暗くなった。手を止めて、ぼんやりと彼の無表情を上げる。
ベッドの備え付けられた目の前の机にはノートと本がぐちゃぐちゃに積み重なっている。因みに全て私の持ち物だ。集中が切れると頭が、くらあとした。ぐるぐると今覚えたばかりの単語の綴りが頭の中にごっちゃに回っている。

「こんなに無闇やたらに詰め込もうとしても、覚えられませんよ」

珍しく私に口出ししてくるアレクさんは自分の仕事は終わったようで、机上の単語集をぺらぺらと捲りながら心底呆れたように言う。そのテキストも勿論、全てチェックは入れた筈だ。適当なページを開いて、この単語をすべて諳んじろとテストされたのが、如何にも馬鹿にしたような態度にどうせうろ覚えだろうと高を括っているのがありありと良く分かる。ムカついたので全部の綴りを即そこら辺の紙に書いてみせてやった。チェックした彼は少しは驚いたような感じでふむふむと顎に手を当てたので、私は少し得意になる。ふふん、私を舐めんなよ、私だってやれば出来る子なんだ。実際比較的簡単な単語だったのと記憶に新しい後ろのページだったから偶然覚えていただけだったのだけれどもそんな事は態々言わなくてもいいと思う。



「まあ、多少は頭に入っているようですね」

私は、それにしても今何時頃なんだろうとぼんやり思う。窓の外は真っ暗なので、夜と言う事は分かるけれどもここのところ夜昼関係なかったので時間の感覚が掴めない、夕食の時間はもう過ぎてしまったのだろうか。少々小腹がすいた。アレクさんに左手首を指すジェスチャーをしたら九時前だと教えてくれた。どうしても文字にするとタイムロスが生じするからまあ、最近だと簡単なやり取りは身振り手振りのほうが多い。それも互いに対する慣れ故に出来る事なので、アレクさんには本当にお世話になっているなあと感じる。私はだから彼のマイペースさに文句を言うことも出来ない。

「何にせよ、本日は早めに切り上げて頂かないと。予定がありますので」

予定、夜、アレクさんは忙しいらしい。やっほい、今日は一人で静かに寝られる。
上機嫌になり良い笑顔で行ってらっしゃい〜と他人事に手をひらひらさせると次に待っていたのは、頭を掴まれてボケッと半開きの私の口に今日の夕食だったらしいパサパサしたパンが詰め込まれるという暴挙だった。続けて無駄のない動きで牛乳も流しこむアレクさんに私への遠慮、配慮一切なし。あぐあぐ必死に飲み込もうとしていたら、次は首根っこをつかまれて備え付きのバスルームに放り込まれた。……扱いが酷過ぎる。

仕方が無いので、為されるがままに体を温かいお湯で温めると、ホカホカと心地よい気だるさが襲って来て、サッサとベッドに潜り込もうと思い始めて寝巻に着替える直前。しかし手渡されたワンピース。な、なに、これ。可愛らしいデザインで盛大にレースがあしらわれているが黒をベースとした生地なので落ち着いた印象を受ける。如何にも何処かのお貴族のお嬢様が来ていそうな感じだ。取り敢えず自分の背丈に合わせてみた………ピッタリだ。


あの、私にこれを如何しろと。着ろということか?こんなにフリフリを私に着ろと!!
言わせて頂きたい、こんな種類の服は私の私服には一枚もなかったし買おうとも思わなかった、それは何故か………こーゆー物は似合う人こそ着るべきだからだ!!


……絶対着たくないと拒否していたら、すごい形相で睨まれたので、仕方なく来たのでした。





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