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ベットの温かい布団の中でうとうとしていると、かたんと部屋のドアが静かに開く音がした。

アレクさんが戻ってきたのか、それともディーノさんが遊びに来たのか。それとも、ロマーリオさん?会う人は限られているので、警戒心も湧かなかった。

まだ重く眠い目を擦りながら上半身を起こす。
ベットの周りはカーテンで周りを仕切られているので様子を窺おうにもそれが出来ない。
しばらくここに来るだろう訪問者をぼーっとした頭で待っていたが、すぐに何やら様子が違うことに気がついた。
しゃべり声が聞こえる。男性のようだ。日本語ではないので、私にはよく、意味が分からない。そう言えば、どうして、此処にいる大人は皆、日本語で喋らないのだろう。でも、アレクさんやディーノさんは、ちゃんと日本語だし。なんで、今まで疑問に思わなかったんだろう。当たり前だと、考えていなかったけど、ここって、本当に、日本?

しかし、今は些細な疑問に意識を向けている場合でもない。その二人が近づく気配がして思わず体が固まる。何枚もの仕切りの向こうの下に高そうな靴が何足か見えた。

耳を欹てると、会話が聞き取れた。
いつの間にか流暢な日本語が飛び交っている。


「おい、こいつの手当て頼む………て、アレク〜いないのか〜?」
「お、おい、今ここって使わないって上が言ってなかったか………?」
「あ〜そうだっけか?
………あ〜、うん、なんか聞いた気がする…………なんだっけか、総入れ替え?」
「覚えとけよ………
アレクもいない、早く出よう……」
「ま、ま〜ま、良いだろ、わざわざ行くの面倒だし!
俺がやってやるよ!!これでも結構キヨウなんだぜ〜俺!」
「…………本当か?変なことするんじゃないぞ」
「うあ〜、俺って信頼ねえー、俺ちょ〜傷ついた〜

「……………………」
「ええええええ!!何その冷たい目!!!」
「さっさしろ。俺はもういくぞ。」
「はいはい、わーかったわかった!
ほらそこに座って!!足出せ!!」

男たちは棚をごそごそ弄りだしたようだ。
ここに来て、訪問者は珍しい。
ベットから降りようと体を動かすと、ベッドがぎしりと音をたてた。


「誰だ!!!」

二人の意識がこちらに集中する。
あ、見つかった!
びっくりと体が震える。こんなときに来た当初に記憶が色濃く残っている。男性に体が勝手に強張ってしまう。咄嗟に口に手を覆って、音を立てないように息をひそめた。

静寂が一時辺りを包む。


「待て、此処は医務室だろう。休んでいる者がいるのは当たり前だ。」
「ま〜そうだけどよ〜つい癖で〜」
「ほら、早く続けろ」

勝手に納得してくれた。こちらに来ることはなさそうだ。
かちゃかちゃ手当をしているのだろう音が再開する。

「あ、そういえば、お前さ〜あの噂聞いたか〜?」
「……うわさ?」
「あ〜いきなり現れた女の子の噂〜」

「――――おんな?」
「マジかよ〜しらねーの??
何処からともなく部屋にはかわいいかわいい女の子が〜ってやつ」
「なんだそのメルヘンな話は………」
「メルヘンって!!!そんな顔で言うなよウケる〜!!つか、い〜じゃん夢あるじゃん〜
そこから共同生活が…………!!うわ〜いい!!」
「……お前は………ジャッポーネのマンガの読みすぎなんじゃないのか………」
「おかたいな〜だからガールフレンドの一人も寄ってこないんだぜ〜」
「俺はお前みたいに女に現を抜かすつもりはない!!」
「はーいはいはいはい。わーかったわかった。ま、どーせそれも根も葉もないウワサでしょ、そんな子見たこともないもん。
つかここキレーな年ごろの女の子って一人もいないし〜
飢えてたんじゃないの〜……男のもーそーってやつだよ」
「…………」
「……なに?」
「………その噂詳しく聞かせろ」


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