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「ユイ、ユイユイユイ!!!」


今日も今日とて私の所に休憩(という名のサボり)に来たらしいディーノさん。
ドアをブチ割らんばかりの勢いで部屋に入って、興奮したようにこちらに近づいてきた。
初めこそ、このテンションの高さと騒々しさに若干引いていたが、悲しいかな何度も見ていると、もう慣れた。
ディーノさんは無邪気で、明るくて、まるでお日様の様な笑顔を持っている。そして、会った初めにも少し抜けている人だと思ったが、一緒に居る時間が長ければ長いほど、そうじゃないと分かる。−少しどころの騒ぎじゃない。そのおっちょこちょいの度が過ぎ過ぎている。何せ、何か会うたびに一回は何かやらかている気がする。何も無いところで転んだり、私が飲んでいたジュースを零したり、態としか思えないほど、そして見事に盛大に。いや、いっそ態とだったらどれだけ救われるか。当初の頼りがいのある、威厳をもった彼の要素は全く皆無で、私は少々呆れ気味だ。少し抜けている所の片鱗は見せていたが、しかし、本当に私を助けてくれた彼と同一人物であるのか…疑わずを得ない。彼は一応部下と呼べる人が居てお偉いさんなのだろうと思うのだが、大丈夫なのだろうか、と関係ない私すら心配になってしまうほど結構酷い。



『どうしたんですか』

何時ものようにまず初めに問う。
会話のやり取りは筆談で行っている。声がまだ回復していないのだ。プレゼントされた大きな黄色のまっさらなスケッチブックと黒の水性ペンが私の声帯の代わりとなっている。
この「どうしたんですか」パネルはもともと書いている物を引っ張り出してきた。この金髪さんにこの言葉は必須で、書き直すのも面倒くさくなってしまった。

しかし、今は正にディーノさんは部屋に籠っていなければならない時間帯ではなかったっけ?
目で仕事はどうしたと目で問いかけると、

「あーいや、出てきちまった」

あっけらかんと言い放つディーノさん。
出てきたって、またですかディーノさん……!?

『さっき ろまーりおさんがここをたずねていらしましたよ』

着てないか?!と態々探しに来るロマーリオさんは疲れ果てた顔をしていた。

『でぃーのさん ここにきていないか、と
また、しょさいを ぬけだされたんでしょう』

「げっ、もう見つかったか……」

少しも悪びれた様子もなくやっちまったと可愛く舌を出す。今日もお茶目に笑うお顔も文句なしの色男。

「いつ頃だ、ついさっきか?」

用紙を一枚ぺらっと捲ってキュッキューと大きく『30』と書いて、それをこの男前の眼下に押し付けてやる。

「あちゃー、オレが出てすぐじゃねーか。
あいつ、部屋の前ではってやがったなー、あー、くそーちょっと休憩するだけだっていってんのに。
あ、いっそオレにソックリの人形でも立てとくか?
………あーーー、でも技術者に特注するとして…そうするとすぐにバレるな。あいつ近頃部屋まで構わず漁るよーになったから。
むしろ、あいつ等の誰かに頼んでオレの代わりに置いとくか………そうだ、そーしよう、
上手くいけば、もっと自由が増えるぞ、なーユイ!!」

面倒くさそうに頭をガシガシ掻いて呟いていたが、彼の中で何か解決したらしく、ディーノさんはなんともいい笑顔で私に同意を求めてきた。

…しりませんよ、そんなこと。

私に振るなと半場あきれ返る。褒めて褒めてと言わんばかりの嬉しそうな無邪気な顔はなんとも従順な大型犬を連想させられる。
というか、私の方が“ディーノさんとどうしても一緒にいたい“と思っているという大前提は彼の中では決定事項となってしまっている。ロマーリオさんの疲労具合を鑑みると、私は別にそこまで会いたいとは思っていない。ちゃんとやるべきことはやってほしいし、むしろ毎度毎度騒がれると逆にウザ……いとは思っていない、多分。正直にそう言うと、ディーノさんは多分落ち込んでしまうだろうことは分かり切った事なので、何も言わないが、難しいところだ。


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