3
真逆、またココに訪れることになるとは。
ツナは、いつかのボロアパートの前でインターフォンを押しあぐねていた。
頭痛のタネと成り得る可能性を自ら尋ねる。
沢田家に居候しているやんちゃな5歳児が丸一日姿を見せない。心当たりのある場所は粗方探し終わった。
訪れてない場所は後回しにしていたこのアパートだけだった。
遂に覚悟を決めて、インターフォンをプッシュする。
ランボの知り合いらしい、あの不思議な女子高生の姿が浮かぶ。
しかし、少し待ってみたが、応答はなかった。ツナは胸をなで下ろす。だけども、何処か残念なような、助かったような。
いないなら、仕方ない、もう思いつく限りの所は当たったし、奈々にも言い訳が出来る。
もう一回、山本や獄寺に相談してみよう。
京子やハルにも捜索を頼んでいるからもしかしたらもう見つかっているかもしれない。
リボーンは心配ないと泰然と構えているし、案外ケロっとした顔で家に戻っているかも知れない。
「何か、御用ですか」
「わ、わあ!」
「あれ、貴方……」
ツナが驚いて振り向くと、スクールカバンを腕に掛けた女子高生が立っていた。女子高生は、相変わらず怜悧で大人っぽい。
その背後には同じく制服を纏った背の高い男子高校生がいる。ダルそうに痛んだ茶髪をしきりに弄ってツナを胡散臭そうに見つめている。女子高生の彼女は彼に何か言うと、舌打ちした後にツナの横をすり抜けて、トタンの階段を下っていった。
「話は中で聞くから、入って」
「でも、いいんですか、あの人……」
「大丈夫。今はキミの方が優先。
さ、入って」
中は外観通りにやっぱり狭かった。
キッチン、広いワンルームにちゃぶ台が一つ。
やはり、あの騒がしい牛柄服の子供は居ない。
「お茶で大丈夫?」
「は、はい!」
取出された座布団に正座して部屋を見渡した。女性の部屋にしては、物が少ない。
モノトーン。
ベッドサイドの本棚には大量の文庫本。
洋書らしき物が整然と収納されていた。
「『ツナ』くんだったっけ?
何の御用?」
自分用のグラスにも麦茶を注いで、細い指先が麦茶の入ったグラスを弾く。
ツナは裏返った声で答えた。
「あの、…その…」
ランボが居ない時点で、目的はもう達成されてしまった。ならば他の心当たりを聞いてからお暇するのがいいだろう。もし、獄寺の言うようにマフィア云々の関係者ならなるべくなら、関わりたくない。しかし、しらじらとした彼女の目線からは拒絶と不信があり、口火を切ることすら憚られた。こうして向かい合うと、少し無愛想な普通の女子高生に見える。制服がそう見せているのか、唯の早合点か。聞いてみたいが「マフィアですか」なんて普通ならふざけてるとしか思えない質問を投げかける勇気はない。
はあ、と沈黙を破ったのは彼女のほう。
ため息の彼女は、バツが悪そうに態度が悪かったと彼女は謝った。
「ごめんなさい、心配して当然よね。
自分の兄弟が何処ともわからない人間の家に居たんですものね」
「え、そ…、え?」
「でも、変なことはして無いから。
最初、公園で偶然にあったの。泣いてたから、家に上げただけ。怪我してたみたいだったし。
ちゃんともう来ないように言うから…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!
お姉さん、ボヴィーノの人じゃないの」
「ん、ボヴィ…、なんて?」
話が違った。
目の前の女の子はキョトンとしているし、先ほどの話が本当ならばランボと関わりあいが有るだけで、不信人物ではなかった言うことだ。ツナはなんだかホッとして、ここに尋ねてきた経緯を全部話してしまった。
「ランボ君なら、さっきまで此処に居たけど…。一時間ぐらいまえ。
りぼーんって言う子を今日こそ倒すぞって張り切ってたから、その子なら知ってるかも」
それを聞いてツナは胸をなでおろした。少なくともさっき迄ランボはここに居て、元気に妥当リボーンを謳っていたのだ。
では、今頃は家でリボーンに返り打ちにあってべそをかいているに違いない。
「お家の方が心配なされているんだったら、ちゃんと連絡すべきだったね。
ごめんなさい、配慮が足りなかった……君にも心配させちゃったしね」
「そんな、ランボが迷惑かけてー」
「態度も悪かったね、
折角、小さなお友達が出来たのに、取り上げられちゃうって思っちゃって。
意地悪しちゃってごめんなさい」
これでは謝り合戦だ。目の前の女の子はふふ、と微笑んで、
「これからも、時々でいいから、
ランボ君と仲良くさせてくれると嬉しいな。ランボ君にも言っといて、いつでもまた遊びに来てって。
よろしくね、『ツナ』くん」
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