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先生の話が終わるや否や、職員室を飛び出したツナ。
先日のテストは低空飛行のまま、家では、怖い銃を携えて赤ん坊が手ぐすね引いて待っている。
後ろめたい物を持ち帰って、更に寄り道などしていたと誤解されては自分の命も危ない。ツナは必至の形相で階段を駆け降りる。

正門をくぐろうとしたツナだったが、門の前には大きな人だかりが出来ていてツナの行く手を阻んだ。

人集りの視線の向こうには、並盛中学校の表札の横で前にしおらしく学生かばんを下げた女子が携帯片手に立っていた。彼女がこの人だかりの原因らしい。
ツナは目を凝らす。
制服は並盛中と類似した、近郊にある並盛高校のものだった。携帯を弄りつつ、通る人通る人に視線を投げている。
待ち人だろうか。何処の誰の知り合いだろうと下校途中の生徒たちはひそひそと色めき立つ。
珍しい女子高生に興味深々だ。

ツナは悠長に見物などしている暇は無い。謝りながら人ごみをかき分け、次第に距離が近くなり、髪で隠れていた女子高生の顔がはっきりと見えた。その黒い瞳と不意に目が合う。すると、女子高生はきゅうと口をへの字に曲げた。
ツナは慌て顔を伏せ、早足に去ろうとする。

「ちょっと、ごめんなさい」

逃げを打つツナに女子高生は人の波をかき分け、

「きみが、もしかして、『ツナ』くん?」

周りの注目もなんのその、その泰然とした態度で目の前のツナの進行方向をふさぎ問いかけた。淡々とした口調は近寄りがたく鋭利で冷たい。

ツナは右左を確かめ、まだ女子高生の座った目が自分にあることを確認して、オレ?!とツナは思わず自分を指さした。
どうしよう。冷や汗を背筋を流れ、

「お、オレ、急いでるんで……」

ツナがいい終わらない内に女子高生は、
突然、ツナの手を取った。

「ごめん、ちょっと来てもらっていい?」

「ちょ、ちょっとーーー!」

無理やりに手を引かれてツナはつんのめりながら女子高生と一緒に校門の人だかりを出る。

ツナの叫びもむなしく女子高生は商店街を抜け、更に奥の住宅街へ。
女子高生は目的の場所につくとツナの手を放して、くるりと振り向いた。

改めて見た女子高生の全貌。
目鼻立ちの均整のとれた顔立ちもそうだがなにより凛と研ぎ澄まされた独特の雰囲気が強烈な印象を与える。
あれだけ早足でツナで追いつくのも必死だったのに、息ひとつ乱していない。

「ちょっと待ってて」

女子高生の向かう先は右手の古ぼけたアパート。一言おいて音を立ててその階段を上がる。体力も尽きて何も言わずコクコクとうなずくツナ。

「この子、お願いしてもいい」

戻って来た女子高生は、何かを抱えていた。憎たらしい寝顔はツナのよく知っている顔で。

「ランボ!お前なんで……」

「いい、起こさなくて。
ちょっと時間がなくって、ランボ君によろしくね」

そうだ、ランボと言えば。うすぼんやり引っかかっていたツナの記憶がよみがえってくる。
覚えがあると思ったら、ランボがらみだ。確か、前に大人ランボが絡んでいた女性が確かこんな出で立ちで中学のブレザーとそろいの並盛高校の制服だった。
ツナは思わずあっと声を上げたが、女子高生はさっさとランボをツナに押し付けると、これで用無しとアパートの二階ち消えてしまった。愛想もあっけもあったものじゃない。
置き去りにされ、茫然とツナは突っ立っていた。




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