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並盛高校、平日中日。
ツナは下校時刻になり、他の生徒に混じって一人帰路の途についた。

少し前では、友人と肩を組んで教室を出ていくクラスメイトを少し羨ましく思っていた。
人一倍時間を掛けて、鞄に教科書を詰め込み早々に教室を後にする、孤立したイケていない側の人間。『ダメツナ』があだ名の自分を、放課後に遊びに誘ってくれる友達はいなかった。
ーーーー少し、前までは。


今日は久し振りの一人の下校だ。
ツナの後ろを付いてくる獄寺は爆薬の仕入れと言って登校自体していない。山本は野球部の練習で部員とともにグラウンドへ。
普段が賑やかな分、一人の下校は結構寂しい。

商店街に差し掛かる。夕日をバックに、夕飯の食欲をそそる匂いがツナのお腹を刺激する。
アーケードを横切るとき、見覚えのあるシルエットを見た気がしてアーケード中に目を凝らした。
視線の先には、ボリュームのある黒髪に牛がらのシャツをラフに着こなした青年の後ろ姿。
見たことがあるの何も、あの派手な牛柄シャツの伊達男の知り合いは一人しかしない。
その牛男は、親しげに誰かと話している。おしゃべりに夢中で、ツナの視線には気が付いていない。
相手とは、遠目で判然としないが、服装と華奢な身体つきで女性とだけ分かる。

どういう知り合いなんだろう。

やがて牛男はその女性を伴って商店街の奥に消えて行った。


行ってしまった。一瞬追いかけようとして、辞めた。
よく考えれば、10年後の住人の彼に知り合いなど『その関係』意外いないも等しい。女性は多分一般人だし、差し詰め、また小さい自分に「10年バズーカ」で強制召喚されて、途方に暮れて通りすがりの人に道案内を頼んだのだろう。
が、目的地が沢田家で有れば、道は全くの逆。「10年バズーカ」の効力が切れれば勝手に戻ってくるだろう。また「若き10代目」と絡まれても面倒だ。

ツナは歩みを再開させた。
カラスがかあと鳴いて、子供が母親に手を引かれて家に帰る。

今日という日の終わりが来る。

今日の夕飯は何だろう。その前にスパルタ家庭教師の指導の下明日の漢字テスト勉強か。
帰りたくなくなってきた。
ガックリと肩を落とす。
逃げる事は出来ない。その選択肢を選べばツナの命の保証はない。

そんな、ちょっと変わった、ツナにとっての当たり前に成りつつある繰り返しの毎日、それだけ、それだけだった筈なのだけど―――――。



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