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「アイツは気にいった奴ほどちょっかいを出すからな、困ったもんだ」

それにな、と話し始めた。
私がまだ国語すら危うくって右往左往していた時の事だ。新参者だった私に、暫く周りのあたりが強かったことはグイードさんやカルロさんも気が付いていた、偶然にその現場に居合わせ、グイードさんは正義感から勿論辞めるよう出て行こうとした。それを止めようとしたのが、カルロさんだった。

「奴は言った。其れこそお前のプライドを傷付ける事になると、
そんなに柔な女ではない。そう言った。
俺は、か弱い女子にそれを求めるのは酷だとおもった。でも、見事に君は信頼を勝ち取り、俺の目の前にいる。
結局、カルロスの見たてが正しかったと言う訳だ」

混乱した。この人は、一体何を見ているのだ?カルロさんの言うみたいにちょっとお堅い所は有るけれどもそこまで鈍感だとは。私はここの皆の「敵」と見なされて、私はそれでいっぱい傷ついて、だからこうして、

話が終わる前に勢いよく、椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がった。そんな筈ない、だって。そうであってほしいと願いながら。

「カルロいわく、『どんな努力も惜しまない、いじらしい女の子』、だそうだ」

「今、………………カルロさんは?」

聞いても良いものか悩んだ末におそるおそる口にすると、寂しげな目で、笑おうとして笑い損なった歪んだ薄い唇は戦慄く。


トイレまでの道を一目散に目指し肘からぶつかった人に謝れる余裕もなく、仲に躍り出でて便座を掴むと、堪えるのをやめた。うえ、うえ、とえづきながら何回かに分けて胃を空っぽにする。辛くて、目じりに涙を溜めながら、吐瀉物の酸っぱい匂いがまた吐き気を催して、最後は胃液しか吐く物が無くなるまで繰り返す。
汚い。
私が望んだたった一つのこと。
充分に満たされてた筈なのに。情の心はいろんな人から様々な形で分け与えられていて。業が更にを望んで、どうだ、結果は裏切りのレッテルを張られた嫌われ者だ。

愛情という名の下に醜く肥大した独占欲。実際をしって、あ、無理だ、と思った。負けた、私には宝石見たいな綺麗なものはあげられない。

『一つ言えることは、耐えろ。お前が黒にされたら、ボスの立場はまた危うくなる。ボスために頑張ってくれよ』

汚いトイレの床に手を付いて、思い体を持ち上げ、辿り着いた洗面台で酸っぱい味のする口内を丹念にゆすぐ。額縁の縦長の鏡には、紙見たいに白くくちゃげた陰気な顔。死にそうな顔。削げた頬を確かめる私の右手。薄れているが醜くひきつった傷。
しばらくペンを持っていない。あれだけ夢中になって欲張りに何も彼も紙面のコレクションに加えてたな。何で辞めちゃったんだろ。




卓上のランプの明かりをともし、ベッドに腰掛けた。此処に来るのも久方ぶりだ。考え深く、しかし何も変わらない。本棚と、ベッドと書類とガラクタ、広すぎて小さな灯火は奥まで届かずに、陰湿な暗がりを影を辺りに落としていた。もう春だとは言え、薄手の長そで一枚では肌寒く、手先にあった毛布を手繰り寄せて体に巻き付ける。そのまま立ち上がるとぼとっと何か固い物が転がり落ちた。足に当たったそれを何だろう、誘眠剤代わりの本がベッドサイドに積んであり、その中の一つでも落ちたのかな。初めは気にもしていなかったが、これも性分、放置なんて私には考えられない。ベッドの下の物体は暗くて判別も難しい。手を一生懸命に伸ばして、あ、掴んだ!手繰り寄せて、埃を拭いた後、明りの近くに持って行って目を凝らした。



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