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「ユアン、わかりますか?あの、ツンツン頭のつり目の男の子」

苦し紛れで不自然すぎる話題提議だけども、ふと真っ先にでたよしなしごとは本当に思い悩んではいた、対処に困っている。元々負けん気の強い子だったのだけれど、最近冷たい。ブスとかバカとか下品な言葉を浴びせて逃げてしまう。やっと仲良く慣れたと思った矢先、あの過度な態度、随分嫌われてたものだなあ。

男は私の独り言とつかないぼやきに珍しく口を開いた。

「ああ、あのオレを良く睨んでくる坊主か。
相当オレが気に食わないらしい」

「いや、それは‥‥警戒心が人一倍強くてどうしても慣れるのに時間が掛かっちゃうみたいで」
「それで手を貸したのか」
「私が施したのは、食べものと少しの知恵です
ここまで生きて居られるのはあの子の力です」
「不定の男を手助けする聖母マリアは哀れな子供には全財産を叩いても施しをすると思っていたのだがな」
「マリアって……私の事ですか?恥ずかしいんで止めて頂けます?おちょくられてるみたいで気分悪いんで。いや名前言ってる訳じゃないんですよ?」
「オレは何も言って無い」
「私は結局自分のためですから」
「あの坊主の考えてる事、教えてやろうか」
最長の話数記録だ。この人も冗談とか言うのかと驚きつつ、男の謎かけに耳を傾けた。
「何か話を聞いたんですか?あの子に」
「聞かなくても分かる
親に粗雑に扱われた者が一番恐れる事だ、分かるだろう」
「想像力を働かせろ、分からないのか、原因はお前だ」
「私……」
全く思い至らなかった。私は不思議に思うだけで、あの子の気持ちを考えた事が一度でも有っただろうか。この男は私には分からない事が分かる?
「もういい、分かった。お前と言う人間が良く分かった」

男は投げやりに手を振って、話を終わりにした。勿論私は面白くない。

「あなたに私のなにが分かるって言うんですか」

無視すれば荒立つ事はないのに無理やりに話を続けさせた。

「お前は孤児などではないだろう。いやしさが無い、所作や言動に現れる其れは隠しようが無い。その手紙の送り主がいる様に身の寄せる相手がいないわけでもないのだろう。
これは責めているのではないぞ最大の恩返しだと理解してくれると嬉しい。
家出か事情はしらないが、維持を張ってもどうにかなる物でもない、もう気が済んだだろう、家に帰りなさい。」

強烈な自覚でもって、全力で思い知らせてやりたい。興味本位で憶測を立て、さも心理のように正論だけをのたもう。こんな他人の一言で何激情してるの、やめろ、止めてくれ後で後悔するからと冷静な何時もの私が叫んでいるが、私は止まらず、私はもう何処かネジの飛んだ機械仕掛けで、どの部品が足りないかが分からない。最初からポンコツだったから、どんどんおかしくなってくる。
私の中に潜む凶暴性、それでもって利己的な、本当の私、愚図で鈍間な私、そこで見ていろ、恐れていたって欲しい物は手に入らない。あざ笑うように、普段から考えられない様な事をやすやすとやってのける。
確か自明であるのは、何らかの地雷を踏んでしまった時、勝手にスイッチが入って全てを台無しにしてしまう。分かっていても止められないのが厄介で冷静になった後、後の祭り、後悔の念に苛まれるのだ。よせばいいのに。積み上げてきた物全て台無しにしてしまう。寧ろそれは望む所なのかもしれないと考える。衝動的に何もかもぶち壊してしまいたくなる。それが、自覚してここ数カ月其れが顕著に表れて来ている。いずれにせよ、不可侵の均衡は脆く崩れ去った。

「これは何だ?」

「あなたは黙って私の質問に答えればいいんです、私に合ったあの晩
なぜあんな所に?」

「………………」

「惚けるのはやめてくださいね、あの連続殺人と何か関わりが有るんですか?
私、血は怖いから苦手なんです」

こうして脅している間にも、薄皮一枚下にある精巧な構造をぶっ壊してみたくて誘惑は魅惑的だ。荒れ狂って、納めて来てぐちゃぐちゃになった感情が出口を探している。


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