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「ニイナ嬢の君への執着は、すごい物が有ったからね。それが何かから来るのかは端から見れば誰にだってわかるさ。ねえ、本当のところどうなの?」

カルロさんの目が探る様に私の正面全体に注がれている。喧騒が一瞬遠くなった様な錯覚を起こした。どうしようもなくなってマッテオさんに目を向けるが下を向いて唇を食いしばって、私を見ようともしない。

「俺、嫌いなんだよねえ〜あの女。俺達を顎で使うのが当然っていう態度が見え見えってゆ〜か。」
「カルロの兄さん、流石にあの女呼呼わばりは……」
「何いい子ぶってんの?君だってそう思ってるくせに。
ボスが選んだから、ちっとは我慢してやろうと思ってたけど。もう限界〜。実際、鬱憤溜まってるヤツ、結構多いぽいよ?コレだから身の程を知らねえ餓鬼の相手は……」

身の程を知らない餓鬼、あんな綺麗な人をそんな風に形容するカルロさん、だったら、私などどんな醜い物体として見えてたのだろうとぞっとした。

「あ、ごめん、怖がらせる気はなかったんだよ!誤解しないで欲しいんだけど勿論、ユイの事は大好きだよ〜。だって何時もぴよぴよ、一生懸命だし、ちょー素直でいい子だし!」
「はあ、どうも……」
「ああん、本当だってば、不審な目で見ちゃいやん〜〜」

何の話なのか。此処まで来て、彼女の話を聞かされなくてはならないのか。追い出されたって?馬鹿馬鹿しい。根も葉もない噂だ。それを確かめたくて二人は来たのか?私は頼まれたって彼女の言いなりになどならないと言うのに。私があそこを出たのは誰の為での無い、彼の為だ。違う所で気分を害したのに、まあ、そう怒らないで、とカルロさんは続け、

「ねえ、ユイちゃん。俺たち、不器用に生きてるけどさ、義理を忘れるほど、冷徹でもないんだよねえ〜。大切にされただけ、僕たちも大切にしたいの。
君は君が思ってるより、大切にされているんだよ。俺はただ、代表として君に会いにきたに過ぎないんだよ、だから、ねえ、ユイちゃん、正直に言ってよ。
苛められてたなら、言ってごらん、俺たちが仕返しをしてあげるから」

「あー………ええと、」

どんどん私の理解の及ばない内に話しは進む。これは、仕返しの算段を持ちかけられてる
と言う意味で良いのだろうか。

「待って下さい、兄さんが変な言いまわしするから、ユイさん変な顔してるじゃないですか!違いますよ、俺らが言いたかったのは、ユイさんは一人じゃないって事です、俺、いつもユイさんには相談してばかりで、なのに、ユイさんの辛い事とか全然聞いてなかったなあと思ったら、後悔ばかりで、それで、それで……」

「マッテオくーん。君も相当意味分からない事いってる、そして告白なら、俺が居ない所でやって」

「え、ええええ!違います、ユイさん、俺そんなつもりじゃ……」

「はいはい、君のユイちゃん崇拝はもうわかったから」

漫才みたいなやりとりにふっと笑みがこぼれてくる。そして二人が其々の言葉で伝えようとしている事も。じんと心が熱くなる。私がしてきたあの頃の努力は無駄じゃなかったんだ。ちゃんと伝わっていた、その事実が嬉しくて、逆に心苦しい。彼らを疑ってばかりいた自分にその信頼や情を受け取る資格が有るのかどうか。

「カルロさん、マッテオさん、ありがとうございます。
すごく、嬉しいです。お二人にそんな風に思って頂いているなんて……」
「うんうん、これを機に考え直した方が良いね。ユイちゃんは謙遜が過ぎるんだよ〜〜これからはどんどん俺らに頼るがいいよ」カルロさんが偉そうに胸を張る。それにぷはっと吹き出した。

「マッテオさんも、そんなこと、全然ありませんから」
「は、はい?」
「私、年の近いお友達ってあんまり居なくて、だから、勝手に親近感持って……すみません。これからも仲良くしてもらえますか?」
「もちろんです……」
それってダメだし?とカルロさんは横から友情確認に水を差し、感激してくれたのかマッテオさんは涙目に成りながらコクコクと頷いてくれている。素晴らしきかな友情だ。



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