惹かれてしまったようです

「菅原くん、今日、昼休み空いてる?
新書のバーコードはるのやっちゃいたいんだけど」

「うん、今日は、昼練の約束もないし、大丈夫。
でもお昼持ってないから購買言ったら直接図書室行くよ」

「わかった!じゃあ、先に行って待ってるね」

「うん、なるべく早く行くようにするよ」

「ふふ、そんな急がなくても大丈夫だよ。菅原くんは真面目だなあ、だから私は助かっちゃってるんだけどね!

ゆっくり来て、先に初めて気長に待ってるから」

最初は時間が取られるからと気乗りしなかった委員会の事務や付属で回ってきた新聞づくりも、携わってみればなんてことはなく、駆り出される昼休みを授業中も心待ちにしている自分が居た。

「スガーー!なんだよ、最近、すみに置けませんなあー」

「なんだよ、ひっつくな」

「二人して逢引のお約束ですかあーこのこのこのー」

「あーもう違うって言ってるだろ。仕事だ仕事。お前がオレを図書委員に推したお陰で、昼休み潰して本のシール張りだっての」

「あーあーこんなんなら、俺も図書委員立候補すればよかったー」

「人を人身御供にしといてよく言う」

「まっじ悪かったーって、ごめーんって謝ってんじゃあん。いつまでもくよくよ言ってんなよ。男らしくないぞー」

「お前今すぐ殴らせろ」

「うっそーっです!軽いジョークでっす。
でも、言いじゃん。かわいいクラスの女の子と二人っきりでお昼、滾るわあ」

「二人じゃねえよ、滾るってなんだ異色悪い」

このお調子者が絡んでくるように、実は、我らが女子図書委員はクラスでは何気に人気が高いのだと後で話を聞いて知った。

「菅原くん?」

「え、なに、どうしたの?!」

「菅原くんこそどうしたの?大丈夫?ぼっとしてるけど、もしかして具合悪い?」

「いや、ちょっと考え事を。ははは」

「疲れてるなら、私やっとくよ?部活も夕方遅くまでやってるみたいだし…」

心配そうに伺う目。くりくりっとした双眸。ふんわりとした、和やかな話し方。雰囲気。
美人、と言うより、可愛いと評される、どことなくアンバランス加減が絶妙な、甘い顔。
出しゃばりでもない。生真面目でちょっと気弱な性格。
こうやって、色恋の対象云々で見れば、彼女が持てるのも分かる。今更に菅原は納得せざるを得ない。菅原自身、彼女の人柄、その心根、ちょっとした茶目っ気で鼻にかかった笑い方をするその仕草にどきりとさせられる。
彼女の手元の日誌に綴られる字は、整然としていて綺麗だ。
菅原は、放課後には部活の合間に図書室に足しげく通っている。大抵彼女はそこに居て、彼女の方も菅原を待っている気さえ菅原はしていた。
今や彼女は、図書委員の片割れ、でもなければ、クラスで人気の高い女子、でもない。
ちょっと気になる、女の子だ。もれなく自分も、彼女の魅力に陥落してしまった一犠牲者になってしまったようである。


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