百害あって一利なし!

「最近ねー何だか、ぼーっとしてて、話しかけても上の空だし、眉間に皺よせてさー
私なんか眼中にないって感じなのね。最近いい線言ってるのかなーと思ってたのに。どういうことなのコレ。
聞いたら、男バレ東峰くんと後輩くんが来なくなったらしいじゃん?」

業間休み構わず他クラスまで来て「今日の彼」報告成るものをしている。大地の机の横に張り付いてぴょこんと机に顔を出しているのは、一年生時は机を並べて同じ授業を受けていたこともあった女の子。その時分ではクラスメイトという名目のみで用が合ったら二言三言言葉を交わすぐらい。別段親しいとは言えなかった。
だのに、クラスが分かれてから急速に距離は縮まり、この業間休みも、そのまた昼休みも気まぐれに出張してきて大地のクラスに顔を出す。大地の貴重な休み時間を妨害しくさる。
ある日「澤村くんだよね、お久しぶり、私の事覚えてる?」妙に馴れ馴れしく朗らかに呼び止めた女子が、この問題の女の子だった。自分に縁のない女子が突然澤村くん、と顔を合わせる度親しみの篭った笑みを浮かべて接する。不思議に思っていたが、菅原の繋がりが見えた時成る程なぁと納得した。「スガくんが好きなの!協力してくれる?」妙に絡んでくるな、と思ったらこの言葉である。
口を開けばスガくん、スガくん。この菅原フリークは、持っている全ての情報、どんな瑣末ごとでも知りたがった。執心に逆に感心してする。今や言われなくても、男バレのスケジュール紙を余分に一枚擦って手渡しておく。二年の付き合いのあるチームメイトは控えめで自分から目立つタイプではないので、その菅原に何らかを見出した女子がいるのは単純に嬉しく思う。見る目があると言う点でこの女子には一目置いている。引くレベルの執心ぶりで辟易する時もあるが。菅原の方は熱烈な秋波に気が付いているのか、いないのか、友好関係は其れなりに続いているようである。そこらへん、抜け目ないし上手いよなぁと大地は思う。
其れにしても何上、直接行けば良いものを自分を経由しなければ気が済まないのか。ねえねえねえ、と机をバンバン叩いて駄々を捏ねる女の子に観念して、はあっと重苦しいため息をついた。この溜息は自分を巻き込む双方に対してである。
こうやって、結局甘やかした態度を取ってしまうから、大地を良い聞き役として見なして、相談を良く持ちかける。傍目八目。何でこんなこんがらがった事になっているのか、大地は絶賛頭を抱え中。

「あのねぇ、なんでそういうことを俺に聞くの。当人に直接聞きなさい」

「だって、話しかけずらいし、澤村くんなら知ってるかもーって。
親友でしょ?バレー部部長さん」

「俺は何も話さないよ。
俺がそういうの嫌いなの、君も知ってるでしょうに」

「それはそうなんだけどさー。
気安くきけりゃ、私も苦労しないよぉ。
だけどさーあるじゃん?女には踏み込んじゃいけない男の体育会系の領域みたいなの。
それにさースガくんが触れないってことに何も知らない私が口を出して、やらかしちゃったらそれこそ嫌だからさー」

「そこまでわかってるなら、放っておきなって」

「でもさぁースガくんって一人で考えこんじゃう感じじゃん?心配でさー
私が何できるって訳でもないんだけど」

大人しそうな顔をとは裏腹に、実は傍若無人、打ったら鳴る竹を割った性格をしている。しかし、話を聞くに菅原もそうだがこの恋する乙女も考え込みすぎるきらいがある様に思う。似た者同士、肝心な所で足踏みをしている状態で、恋の進展もあったものじゃない。挙句の果てには、妙な安全圏の良い相談役に見なされた澤村には馴れ馴れしく絡んでくることが多くなっていて、それがあらぬ噂を呼んでいることも澤村は承知だった。正直、めんどうくさい。本人同士で勝手にやってくれ。勘弁しろ。

そして、菅原方。

「なあ、大地って、付きやってるやつ、いるんだろ…噂を聞いたんだけどそれってさ…」

「ああああ、もう、うるさいわ!!」

「ええ?!」

「頼むから、ほっといてくれ、勝手にやってろ!」

「え、ええ!?」

菅原をうろんな目で一括する、鼻息荒く、ちゃっちゃと真っ暗い帰路を歩く。
部活で疲れているんだ。部も公式試合が終わったばかり。何かと問題のある一年に、帰って来ない部員二名。男子バレー部部長、澤村大地。

「他人の甘酸っぱい腫れた惚れた好いたなんかに、感けてる暇なんかあるか!
俺は忙しいんだ!」

大地の受難は続く。

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