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「でえ?ナニ室長に無理難題言われたん?」

「見てたんですか…」

「話は聞こえなかったすけど。室長、ウェンハムのこと気にかけてるみたいだったからね、うち、激務覚悟で親類にもあえないっすから、ナカナカ新しい人が定着しないから、気持ちはわかる。新人君は入った数か月はね、お試し期間なんすよ。耐えきれるかどうかのテスト、で、ウェンハムが入って今日で…」

「三か月とちょっとです」

「まだそんなもんすか。まあ、室長からアポイントがあったってことだから、一応これでウェンハムも黒の教団、科学班の一員の仲間入りだね、おめでとう!晴れて、ブラック、ウェルカム研究浸けの日々!」

「茶化さないでくださいよ!」

「茶化してねえすよ。褒めてるんだよ、実際こんな辺鄙な所で良くやってると思うよ俺は」
ハンが付け加えていった。

「あの人が一番、えげつねえすからねえ。でも、間違えは無いから、まあ騙されたと思って付き合ってみなよ」

確かにあの若さで科学班室長まで上り詰めたのは、驚嘆に値する。
しかも、それがイノセンスに選ばれた実妹の為だと聞いたこともある。
この本部に居るらしいが実際に会ったことは無い。

「室長の妹さんって、実際会ったことは無いんで良くわからないですけど、ハンさんは会ったことあります?」とハンに聞いてみた。ああそうか、リーバーは会ったことなかったかなとハンは疑問に答える。

「ああ、ウェンハムはまだいなかったっけ…かわいい子っすよ。あの室長と血繋がってるのかってぐらい素直でチャーミングな子すから。時々、少し前までフロアにも良く遊びに来てたんすよ。今はちょっと任務で絶対安静らしいスけどね」

それも知らなかった。
ハン上司は病室に何度かお参りに会ったことがあるらしい。ぬいぐるみを持ってってやったら喜んでいたと誇らしそうにリーバーに話した。

「肉親を、しかもあんないい子を戦場に送り出さなきゃならないんすからね。室長って立場もきついすよね、同情しちゃうなあ」

今度、その話題のコムイの妹の見舞いに行くときは付いていくことを約束した。

「イノセンスの適正は年齢に関係ねえすから、リナリーちゃん以外にも子供のエクソシストは何人かいるんすけどね。
アジアンだったら、カンダ、とか言う怖い餓鬼とリナリーちゃんと、あと……」

指折りでエクソシストの名前を列挙していくハン上司。
そこに、通りがかった女性が一人自分のお盆を持って、二人の話題に割って入る。

「あら、二人とも、なに内緒話してるの?私もぜひぜひ混ぜて頂戴」

「いやあ、マリア」

健康的な体つき、マリア、と呼ばれた若いアメリカンは救護班の任につく女性。ぽったい唇を突きだし、豊満な体を屈ませて二人に言い寄った。「ここ、いいかしら」とハン上司の横の席に、ハンがどうぞどうぞと言う前に、自分のお盆を下ろしてしまった。

「こんにちは、新人くん。噂はかねがね聞いてるわ?優秀な新人くんが科学班に入ったって。それ、君の事でしょ。ハン、紹介してくれる?」



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