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「野ー良ちゃーん」
「陸巴、また会ったね」
闇に、二人。
良くない物が、跳梁する、丑三つ時。
後ろ暗い密談には、より黒より、中途半端な乳白色の闇を。
白と黒とが混じり合う、夜。
明らかな漆黒では、目立つ。
しかし、白にはもう、成り切れない。
一度不審を持てば、何も考えず忠義を示すことは不可能。
元は心は人間、潔白では居られぬ、唯の人間。
愚者には気がつく事の無い、空虚の穴を覗き込んでしまったら。
薄く野良が口をしならし、艶然と微笑む。
「その名前、好きじゃないわ」
彼女には黒がよく似合う。
墨を落とした艶やかな髪。白いおもて。
無垢な故の残忍な声色を忍ばせ、クスクスと。
「この中から好きなので呼んでいいよ」
白い両腕をそでから出した。
かぞえ切れない名。野良の証。
陸巴は無言でクルクルと枯葉を弄ぶ。
「そーいえば!見に行ってきたよ」
「どうだった?夜卜は」
「随分、話が違うね、
キレもんだよありゃあ。
伴う神器もきれいな太刀でさあ、息もぴったり」
使えるよ、と陸巴は笑う。
「そうだ、お礼言わなきゃね。
野良ちゃんの言う通りさぁ、役に立ったよ。
いい落し物を拾った、あともう一歩で逃げられちゃっけどね。ザンネン、ザンネン」
「ほら、ね、言ったとおり。
どんなモノでも使い道はあるのよ?」
シャラン、鈴がなる。
「でも、厄介だねえ。
なるべく外野はいない方が好ましい。
どうしたもんか」
「それなら大丈夫。
あんなモノ、直ぐに切っておしまいよ」
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