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降り立った郊外の町は先ほどと打って変わって閑散としていて、人通りは多くなかった。
あい変わらず私を連れまわす私の一歩前を行く男の方は、相変わらず口をへの字に曲げた仏頂面で、話しかけずらいし、向こうも何も言わないでと、とっても絡みずらいオーラが男の方から出ているので、置いて行かれないように着かず離れずの距離を取りつつ後ろを付いて行った。のらりくらりと緊張感のない歩み。
しかし、歩幅が大きい所為か何度も置いて行かれそうになった。早足で危うく追いつく、を繰り返して、遂に足を取られて、前につんのめり、地面に掌をついた。

「わ」

膝を付いたまま掌を広げると砂粒にまじって、赤い血が滲んでいて、わずかなタイムロスで前方の道しるべは忽然(こつぜん)と姿を消していた。

何処言ったんだろう。おいて行かれた。

そう気づいて、目の前が真っ暗になった。

悲しい事実に虚しさがこみ上げてきて、どうして私はこんなところに居るんだろう、そもそも何でこんなところまでのこのこ付いてきたんだろう、と様々な思惑が頭の中に渦巻いた。

夕刻を過ぎて、行き交う帰途に就くスーツ姿のサラリーマンや買い物かごを持った主婦。辺りはうす闇に覆われ、誰も往来で座り込む娘に見向きもしなかった。
痛い。寂しい。
私はどうしたらいいんだろう。
目頭が熱くなった。

絶望感が胸を襲う。



すると、

『キキ、キキ、』闇の中から声が聞こえる。

私をいざなう声がする。

『オイデヨ、オイデヨ』

目を閉じ耳を塞いだ。
あまやかに私を誘う、ささやきを聞いてはいけない。
ソレに手を伸ばしたらいけない。
そう思うのに、私は恐る恐る目を開いた。

「!!」

声も出ない。

大きな眼球。

どろどろとした、禍々しい何か。

異形のモノ。それらが挙って、私を見つめていた。

目を合わせちゃダメ。
黒のモノがそろりと手をこちらに伸ばす。
ガチガチと歯の根が合わない。

どうしよう、飲み込まれる。

助けて、助けて、助けて。

その時、一陣の風が吹いた。

直下に落下した何かが、不吉な異形のモノを吹き飛ばしてしまったのである。

スニーカーが残骸をにじり潰した。

『ギャ、ギャ、ギャ』
断末魔を上げながら、異形のモノは塵となり、霧散していった。

ダボダボのワークパンツ、緩いパーカーのポケットの諸手を突っ込んで、私を見下ろす。
ふわり、と覆っていた前髪がまかれ、鋭い切れ長の双眸が、呆気にとられている私をじいっと凝視していた。

月下、大きなぬらりとした影が、私に手を伸ばす。条件反射でその手に捕まると、

「一器」

どくりと心臓が鳴った。

「オレの手足と成れ」

高揚感と共に、私は夢中で彼の命令を順守した。



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