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全てが終わったころには、全身をまとわりつくような倦怠感が襲い、その大きな腕の中に身を沈ませる。

「あ、」

「いい、そのままでいろ」

喉にざらつくような低いノイズの様な声が心もとない心に安心感を与える。のろのろと面を上げた。

頭一つ分高い男の顔はざっくばらんに伸ばした黒髪によって覆われており、伺うことはかなわない。頓着しない人なのかな、と思った。
触り心地が良さそう。
手を伸ばして、触り心地を試してみると擽(くすぐ)ったそうに首を振った。犬みたい。剥き出しになった首根が冷たい外気に触れて思わず、体を震わせる。
それを見た男の人はやんわりと私を立たせると、自分の来ていたフードつきのジャケットを脱いで肩に掛ける。

「あ、りがとうございます」

私は戸惑った。
私はそこでいつの間にか病院で着る様な白い浴衣みたいなの(白衣)を着ていることに気がついたのだ。
テレビで見る島流しに合う罪人みたいだ。
ジャケットは随分私の体には大きくてまだ、男の人の体温が残っていてぬくぬく温かかった。ジップアップしてくれたのに甘えて埋めた目を細める。

「あった、かい」

だぼだぼのワークパンツに緩いパーカーと言う居出立ちの若い男は、元々ぐしゃぐしゃの髪を犬みたいにまた大きな掌でぐちゃぐちゃにした。

「これからアンタはオレのもんだ」

ぽそぽそと囁くような言葉は私を縛った。

「オレの言うことは絶対だ。わかったか」

訳も分からないまま、神妙(しんみょう)にうなずいた。それから、私の全部はその人になった。




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