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己の存在の意味を悟る。
呪いを。
生きとし生ける者、全てに、
自分を廃(はい)し、屠(ほふ)ったこの世の全て物に、等しく、災いを。
呪詛(じゅそ)は穢れと成り、中つ国(なかつくに)に降り注いだ。
穢れは魔となり、大地を汚す。
雷ががなり、飢饉(ききん)が村村を襲う。
干ばつが人々の生活の糧を、洪水が命を、問答無用に押し流す。
何故なら、そうある様に、生み出された。
世を忌み呪詛をまき散らすは、禍津神。
呪いを、呪いを、呪いを。
内省(ないせい)してみたとて、道も分からぬ、生き方を知らぬ。
母は、子を慈しみ、
子は、母をはぐくむ。
「あの、あなた、だれですか?」
蓋(けだ)し、思うも。
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