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場所は、鈴巴くんの桜の下。遅れていった方が具合がいいだろうという目論見で、ゆっくり遠回りした。宴会は既に始まってる。青いビニールシートに広げられた重箱の沢山の料理は既につつかれて半分は酔っ払いのお腹の中。お酒の缶は開けられ、皿と散乱している。
何回か訪れた場所だったけど、桜の根の足元に大人数がわいわいがやがやしてるのは、やっぱり楽しそう。少し哀愁漂ったピンクの花は、今は華々しい暖かい色合い。
神様、神器、家族を超えて、桜のもとに宴会に集う。
雑然とした席の奥に、出来上がっている夜卜さんがいて、私とヒルコさんをみて、
「うおおっ、マジで来やがった!!すげぇ、コレで大四柱そろい踏みか〜」
疎外感ぱねえといじけた顔をして、ぷはあとビールをカラにする。
「もう、夜卜、飲み過ぎです!
一凛さん、来てくれたんですね!先に始めてしまって」
「う、ううん、
私たちこそ、遅くなっちゃってゴメンなさい。お招きありがとう、えっと」
宴会に水を差してしまった形だ。
「もちろんです!さ、ひ‥‥蛭子神様もどうぞ、えっと、席は‥‥」
既にひしめき合っているブルーシートにひよりちゃんが慌てて2人分の席を探す。
そこで、衝撃的なことが起こった。
顔を上げなかった毘沙門さまが、盃を置いて私たちの前にやって来て、深々と頭を下げた。すまなかった、ありがとう、と。
目が潤んで、顔は真っ赤だった。
その言葉で全て通じた。

お酒はみんな美味しそうに飲むので、試しに藍巴ちゃんのをちょっと舐めて見たけど、苦くて飲めたものじゃなくって「一凛ってば子供ね」と笑われてしまった。
夜卜さんと毘沙門さまの飲み比べが始まり、みんなで不服で悔しそうに隣に座ってる二人を肴に囃し立てたり、思い思いに語った。
私は藍巴ちゃんに捕まって、くだくだ担った藍巴ちゃんのからみ酒をあやしながら、双子やお団子の女の子の興味深々の質問を受けた。
「蛭子神様の神器ってどんな感じなんすか」
「こう見てみると、普通っすよねーあ、ごめんなさい!マジでフツーで逆にびっくりで。てか、一凛さんっすよね。だいぶ前と印象違うから、全然わかんなかったです!」
ヒルコさんは、席の向こうで天神さまと互いに清酒を酌み交わしていた。
いつもより、寛いだ表情。
うまそうに猪口に口を付けて何か話している。
天神さまはほうほうと笑顔でつぎ足す。
ヒルコさんって、お酒飲むんだ。
世捨て人の印象だけが強くて、誰かのお酒を注いで、和やかに話に入っている姿を想像したことは無かった。
もしかして、私が思い込んでいたよりも。全部、人とか、みんな、この生活が世界が。
私は、思ってたよりも、自分勝手なのかもしれない。
喜ばしいことなのに、胸がひりひり痛くなり、苦い気持ちをお茶で飲んだ。
途中で、お酒とおつまみのストックがなくなったので、お酒が飲めない組、兆麻さんとひよりちゃんと私で買い出しにいく。
静かな所に出てほっと一息だ。



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