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長年続いていたいがみ合いの誤解はとけた。
毘沙門邸は酷いありさまで、たくさんの同胞が大型の妖に取り込まれて手遅れで、滅する他にしかたがなく、多くが犠牲になった。
毘沙門さまがこれ以上傷つかない様に自ら負った兆麻さんの傷は、決して浅くなくて、暫くはベッドの生活だったと聞いていた。しかし、この度、兆器さんは絶対安静から回復してなんら問題なく日常生活を送れるようになったらしい。
私にその後の毘沙門家の様子を教えてくれるのは、小福家に私に会いに来る藍巴ちゃんだ。
毘沙門家の風通しは随分よくなったと藍巴ちゃんが嬉しそうに語る。意見交換?の一環として、毘沙門さま発案で交換日記を始めたとか。書き込みのオチがおかしくって、くすっと笑ってしまう。大家族ってどんな感じだろう、また違った感じなんだろうか。
その藍巴ちゃんは、被害者であり、加害者でもあった。陸先生に唆されて、妖を餌にひよりちゃんをさらった。でも、あの苦しい禊に見事に耐えて、潔白の身に戻った。
後日、藍巴ちゃんは、私のところまで来て、謝りに来てくれたんだ。
自分の行った罪の重さと、私を巻き込んだこと、謝られて、謝り倒されて、いいよと許した。そしたら、今度は私に対して溜まっていた鬱憤が湧いて来たらしく、
「ずっと心配してたんだから!薄情者!連絡ぐらいしてくれたっていいのに!
水臭いじゃない、バカ!」
と、泣きながら怒られた。私は、私の鈍感さは本当に藍巴ちゃんを傷付けていたんだとこの時、自覚した。
「藍巴ちゃん、ごめんね」
「なんで、一凛が謝んのよ!
こんだけ言われて、少しは怒んなさいよ。
ほんっと、バカね」
最後は泣き笑いではにかむ藍巴ちゃん。
私の方は、藍巴ちゃんに嫌な感情はない。私に罪悪感があるみたいだけど、藍巴ちゃんに何をされた覚えはない。でも、話を蒸し返すのははばかられた。
終わったことに労力を使うんだったら、これからの事に目を向けるのが、建設的だ。
藍巴ちゃんは、ヒルコさんや夜卜さんに対する怯えがあるみたいで、留守の時を狙ってくるのだけど、何故だかヒルコさんの姿が有ると表情が固まり、怯える。ヒルコさんの方も、毘沙門の、とじいとねめつけるから、あんな恐ろしい方と良く一緒に居られるわよね、と言われてしまう始末だ。
私にしたみたいに、ケジメはつけたから、とそれ以上はその時のやり取りなんかは教えてくれない。
ヒルコさんがまた、いつもの誤解されるような、素っ気ない態度で、言葉足らずな返しをしたに違いない。優しい人なのだと説得しても、わかった、一凛にとってはね、と藍巴ちゃんは、聞き飽きたと耳をふさぐ。
それ以外は、元気で勝気な藍巴ちゃんのまま。イキイキと毘沙門さまのことを話す、藍巴ちゃんはやっぱり可愛くて。一凛ともちゃんと話がしたいっておっしゃってたわよ、と言われたが、苦笑いで言葉を濁した。


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