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カチ
カチ
カチ
カチ
居間の掛け時計。
秒針が時を刻む。
カチ
カチ
ボォン、と戌の刻を告げた。
「………、一凛ちゃん、帰ってこねぇなぁ」
「そうだねぇ、いちいち遅いね」
食卓を前に沈黙する小福家の一同。
カチ
カチ
カチ
「しかし、一凛は日中、一体どこへ?昨夜も帰ったのは深夜だったようです。朝食もとっていない。心配では?」
「あたしは知ーらない。
用事があるって、それだけ。ぜったいいちいち教えてくれないもん。」
「小福様もご存知ないのですか」
半端怒ったように返す小福に兆麻は絶句した。
「先ににご飯、食べちゃおっか」
「でもよぉ、小福」
「ダメだよ、大黒。甘やかしちゃ」
ピシャリと小福は撥ね付けた。
「あたしたちがどうにかしても、意味がないもん」
「しかし、小福様。
このまま放置しておいて、大事になったりしたら」
「そしたら、しょうがないって思うしかないね」
「小福様……」
「ひーくんも、ひーくんだよ、ほんとにもう」
「あーあ!!どいつもこいつも辛気臭ぇツラしやがって、飯が不味くなる!」
「おいっ勝手に食うな」
「今いない人間に気を揉んでもしょうがねぇって。
それに、兆麻、お前人のこと心配してる余裕なんかあんのか?
そんな暇あったら、あの痴女を口説き落とす文言でも考えろって。それか、今すぐ土下座でもなんでもしてこいよ」
「………」
「わかっちゃいるんだけどよぉ、
俺ぁは、あんなドグサレ神でも、水蛭子も一凛ちゃんも居なくなるのは寂しいなぁ……」
毘沙門邸、某所。
「藍巴、できるね」
「本当なんですか先生。
あの子が、そんな」
「嘘なものか。
今や彼女は姉様の憎っくき敵だ」
「でも、あの子は、……てんでダメな子で。
そんな様には」
「思い出しなさい、藍巴。
姉様はずいぶんと彼女に入れ上げていたじゃないか。不思議には思わなかったか」
「まさか」
「何も知らない顔で、我らの地位を貶めたのは一体誰だったのかを」
「大丈夫、此れは制裁だ。
きっと姉様も目をお覚ましになられる」
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