選手入場の前、神童は必ずこっちを向く。勝つぞ、と伝えるような視線を俺に送ってから、奴はピッチに向かって歩き始める。俺はそれを見るたび安心する。
小学生の頃、神童と二人で日本代表の試合をテレビで観た。そのときピッチに現れた代表選手をみて、鳥肌がたった。彼ら日本を代表して世界と戦う存在なのだ。当時俺たちには背負うものがなかった為、すげーな日本を背負って戦うってやばいなかっこいいな、と絶賛した。しかし今、俺たちは雷門中を背負って戦っている。規模は全然違うがあのときみた彼らの気持ちがわかる気がする。ピッチに出る前は怖い。怖いが、俺たちは戦わなくてはならない。負けることは考えない。勝つ為に、ここを出る。勝つ為に、ピッチに立つんだ。きっと神童は俺たちよりも大きなものを抱えている。キャプテンとしての重圧、司令塔としての重圧、様々なものが彼にまとわりついているだろう。恐怖や緊張も俺たち以上だと思う。しかし彼はそれに打ち勝ち、ピッチに立つ。入場前に見せる視線は、神童の気合いが感じられる。そんな奴の背中に向かって、こいつは今日も魅せてくれるな、と笑う俺に彼は気づいていないだろう。



20120208






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