神童は日記をつけていた。一度内緒で見たのだが、とても綺麗な字で書かれてあったことを覚えている。
ある日、俺は神童を叩いた。あいつは泣かなかった。すいません、と一言謝ってから俺が落としたタオルを椅子の上に置き、俺を抱き締めた。明らかにわかっていたのだ。俺のことだけを考えてろ、という恥ずかしい嫉妬を見抜かれていたのだ。日記にはサッカー部の面々やクラスメイトの名前がよく見られたから、俺は素直に嫉妬した。それを行動に出すつもりはなかったのだが、一年と一緒に笑う神童を見ていたら勝手に身体が動いていた。
くだらない理由で叩いてしまったことを謝りたい。謝りたいのだが神童は俺に謝る隙をくれなくなった。
「南沢さん、南沢さん」
俺を呼び続けるこいつはあのとき叩いた俺のことをどう思ったのだろうか。また内緒で日記を見てみた。そこには乱れた字が並んでいた。
南沢さんは俺のことをあいしてくれました、南沢さんは俺のことをたたきました。
叩いたあの日から日記の内容は変わっていない。毎日毎日同じ文を書き続けていたのだ。ふと後ろを向くと、神童が立っていた。勝手に日記を見たことを詫びると、神童は泣いた。



20120130






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