今日初めて部活をサボった。霧野先輩に会うのが嫌だから。霧野先輩は部活が終わった後、毎日毎日懲りずに俺を叩いたり蹴ったり殴ったりする。サッカーやってる奴が蹴っていいのはボールだけだっつーの。俺の頭はボールじゃねえよ。痛いんだよ、スパイクじゃないだけマシとしてもやっぱり痛いんだ。痛すぎて逆に涙出ないってくらいの威力。うん、まじやばいよ死にそう。それにあの人変なとこ頭いいから最悪。見えるところに傷は残さないし、頭蹴っても顔は蹴らないし、着替えるときは霧野先輩が盾になって身体の傷を周りに見せないようにしてるし。
「狩屋」
「…え、」
後ろには満面の笑み、の、霧野先輩。どういうこと、なんでいるのもう学校から結構離れたとこまで来たのに。無意識に足が動く。後ろを振り返らずに、前へ前へ、全速力で走る。走っている間は絶対にあの人のことを考えてはいけない後ろは見ないなにも知らないなにも見えないなにも聞こえない。
足が縺れた。もう走れない。かなりの距離を走ったらしく、周りを見渡してみると全然見たことがないところだ。ああもうやだなどうしよう、早く帰ろう今日は疲れた。とりあえず携帯で現在地を調べて、帰路を確認する。道程を理解し、ずるずると足を引き摺りながら歩き出すと、な、んか、嫌な、空気、が、
「探したぞ、狩屋」
どうしてここにいるのかとかどうして俺なのかとか、考えれば考えるほど色々な疑問は出てくるけどそんなことは、もうどうでもいい。今身体の底から湧き出てくるのはただ一つ。死にたい、本当に死にたい。こいつから逃げたい。逃げ切れない自分が嫌で嫌で、今すぐ赤信号に飛び込みたいくらい。けど今更そんなこと出来ないしなんていうかね、これも運命なのかなってね、そう自分に言い聞かせなきゃやってけないなあ。あ、やっと涙が出てきた。ハハ、今は泣くところじゃないっていうのに。なに泣いてんだ俺は。

「一緒に帰ろうな、狩屋」

やっぱ、泣いてもいいんじゃないかな、これは。やっぱ、死んでもいいんじゃないかな、これは。俺の頭をゆっくり撫でる霧野先輩の手はとても暖かかった。



20120219






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