「気持悪い……」
木陰差す公園の芝生の上で、だらしなく寝そべったままぼやく。
胸の奥からせり上がってくるような吐き気と痛む頭。
おまけに汗で濡れたTシャツが肌に張り付いて、不快感は募るばかりだ。
「普段の行いが悪いからそうなるんだよ」
ざまあみろと鼻を鳴らしながらこちらを見下ろす静雄に、あのねぇと溜息を吐き出す。
「シズちゃんが、この炎天下の中追いかけてくるからでしょ」
「それは手前が池袋に来るからだ」
木漏れ日に重なった黒い影が、すっと消える。近付く人の気配に、熱気も伴う。
「……おら、これ飲め」
すぐ傍に座る静雄が差し出すのは青いアルミ缶。スポーツ飲料が入ったそれは、暑さでぶっ倒れた臨也のためにわざわざ買ってきてくれたらしい。
「……ありがたいけど、俺、今、身体起こせそうにない」
気怠げに吐き出せば、静雄は、あぁ、とひとり納得したように頷くと手に持った缶ジュースを一気に煽る。
次いで、臨也の頬に手を添え、顔を寄せると、唇を重ねた。
瞼の裏に広がる金色。薄く開いたままの唇から甘ったるい水が流れこむ。
なまぬるいそれが口内から溢れ頬を濡らし、ゴクリと喉を鳴らせば、柔らかな唇は直ぐに離れていった。
「……生き返ったか?」
「……うん、助かったよ」
静雄の細い指がさらさらと前髪をさらっていく。
「にしても」
茶色の瞳が、眩しく光る太陽に向けられた。
「暑いな……」
暦の上ではまだ春なのに、せっかちな夏がその身を燃やし、静雄の首すじにも汗が伝う。
「……シズちゃん」
ゆるりゆるり吹く風に乗せて名前を呼べば、また、唇が重なった。






2012/05/03

















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