(新羅と静雄)



 気になっていることがある。それも今朝からずっと。
 隣を連れ立って歩く金髪の男。その首に巻かれた目も覚めるような真っ青なマフラー。
 日ごろ薄着な彼にしてはめずらしいと思ったが、ちょうどその前の土曜日が誕生日だったことに気づく。大好きな弟にでもプレゼントされ嬉しくて着けているだろうと納得した。
 しかし、午前の授業、昼休み、午後の授業と今に至るまで、一度として外されることのなかったそれを見て不審を抱く。
 理由を問うてみたいのだが、そのことに触れると不機嫌になるのは既に目に見えている。実際、彼は今日一日、虫の居所が悪いのかぴりぴりしていた。
 命が惜しければ、静雄を怒らすのは得策ではない。
 ――なんだろ……。風邪引いてるわけでも、寒いからしてるってわけでもなさそうなんだけど……。
 その時、冬の冷たい風が吹き荒れた。
 ゆれなびく青――だから、そう、己の目はしっかりと見てしまったのだ。
 一瞬、マフラーの隙間から覗いた銀色に光る四角いそれを。
 「さむ……新羅、肉まん買って帰らね?」
 「あ、あぁ……うん、いいよ」
 少し反応するのが遅れたことを誤魔化すように「誕生日だったし、おごるよ」と口にすれば、静雄は小さく礼を延べ、照れたように目を伏せて笑った。
そんな彼に自分は何も見なかったことにしようとひっそりと心に決める。
 ――まったく……そういうこと、ね。
 脳裏に浮かんだ、なんとも悪趣味な男の顔に、重い溜息を吐いたのだった。






2012/01/30




 




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