「……、」

ぱちり。
自然と目が開く、気持ちのいい目覚めだった。
全身がぽかぽかとあったかい分、頬に触れる部屋の空気がより冷たく感じる。
そっと頭を傾けると、私の隣には静かに寝息をたてるサッチさんがいた。

(まだ寝てる…)

珍しいな、私が先に起きるの。
昨日は遅くまで一緒に起きていて、その間サッチさんはお酒も挟んでいた。
もちろん仕事疲れもあったのかもしれない。
今は何時だろう。
カーテン越しでもわかるくらいには外は明るいようだ。
七時くらいだろうか。
少しだけ体勢を変え、携帯に手を伸ばす。

「…んん、…」

抱き寄せる…とまではいかないけど、サッチさんが私の体に片腕をまわした。
起こしたくはなかったので動きを止めて様子をうかがっていると、サッチさんはそのまま私の体に顔を寄せる。
静かに見守っていると、すぐにさっきと同じ寝息が聞こえてきた。
携帯に伸ばした手を引っ込め、私も布団に入りなおす。

(…ふふ、)

サッチさんは私が起きるって思ったのかな。
もう少し、って思ってくれてたら嬉しいなあ。
サッチさんの寝顔を見ていると、いろんな気持ちが湧いてくる。
安心しきった、無防備で穏やかな表情が好き。
少し開いてしまっている口に、つい笑みがこぼれる。
普段はあんなにかっこいいのに、寝顔はちょっとだけ幼くてかわいいんだ。
サッチさんは私への好きをちゃんと言葉にしてくれるけど、さっきみたいに態度で表してくれるのもすごく嬉しい。

(…どう、しよう、)

この短時間だけでサッチさんへの気持ちがどんどん溢れてきてしまって、胸がとくりとくりと鳴ってしまう。
サッチさんの近くにいたくて、もっと触れていたくて。
私もサッチさんのことが好きなんですって無性に言い表したくなってきて。
起こさないようにそっと、そうっと。
軽く触れるだけのキスを終え顔を離すと、それまで閉じていたサッチさんの目がゆっくりと開いていく。

「…何。寝かしてくんねえの?」

たっぷりと時間を使い、からかうような口調で。
少しかすれた声と、とろんとした甘い視線に鼓動が速くなる。

「そんなつもりはなかったんですけど…」

何だか、急にしたくなって。
そうとは言えず、言葉選びに迷う私にサッチさんは優しく笑う。
そのあと目を閉じたサッチさんからまた安らかな寝息が聞こえてきて、私も誘われるように眠りにつくのだった。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -