ゲリラライブをしてみて良かったと思ったことはたくさんある。
すごく緊張したけどそれ以上に楽しかったし、バンドの先輩たちともっと仲良くなれた気がするし…名前も知らない三年生の先輩たちが私に声をかけてくれるようになったこともゲリラライブのおかげだ。
それも多くは男の先輩で、おはようとかお疲れとか、部活頑張れよとか…そんなことを言ってくれる。
きっと白ひげの先輩が三年生だから、そのつながりでメンバーの私にも応援してくれるんだと思う。
けど、良いことばかりってわけじゃなくて…。
「…お疲れ様です。」
「おつかれー。」
「何だよ、テンション低いぞー?」
しばらくイベントは無いみたいだけど、相変わらず毎日が練習日。
もうこの生活に抗議する心を持たなくなってしまった私は、きっとあの先輩に支配されたんだと諦める。
「フィルちゃんどうした?大丈夫?」
「大丈夫です……多分。」
「た、多分って…」
「何かあったのかよい。具合悪いのか。」
「具合は悪くないんですけど…」
「「「けど?」」」
言っちゃっていいのかなあ…。
でも言ったら先輩たちに心配かけるだろうし、せっかく成功した(と私個人は思っている)ゲリラライブが原因ってわかったら、楽しかった思い出がだめになっちゃうと思うんだ。
だから黙っておいた方がいいのかなとも思うんだけど…
「……あの、」
がらっ。
「全員いるな。始めるぞ。」
ああ、来てしまわれた…。
マルコ先輩とかジョズ先輩にはまだ言えるかなあって思うけど、この先輩にだけは言えそうにないな…絶対服従してるせいか?
…あ、あとサッチ先輩にも言えないというか…知られたくないなって思う。
「フィル、何だったの?」
「え?」
「何か言いかけてたでしょ?」
「あ、いえ…大丈夫です、雨降りでじとじとしてるからそれで元気でないのかもしれません。」
「そうか?ならいいけど…。なあ、今日は何するんだ?」
心配かけたくないし、楽しい思い出はそのままにしたいし、それに…いじめられているかもしれないなんてやっぱり言えない。
ぼーっとしてたら怒られちゃうしね、気持ちを切り替えなきゃ。
さて、ゲリラライブも終わったし…今日から何するんだろう?
「決まってんだろ。反省会だ。」