「あ。あれって昨日の…ほら、ボーカルの子。」
「ホントだ。声きれいだったよな、おれ好きだったわー。」
「今から部活かー?がんばれよー。」
「!あ、ありがとうございます、」

(何か有名になっちゃった…。)

人生で初めてのゲリラライブを終えた、その翌日。
どうやら私は学校内で話題の人になっているらしく、登校のときからやたら視線を感じるし、クラスの子にもいっぱい話をされた。
さっき声をかけてくれた先輩は三年生だったし、バンドの先輩たちの影響力ってすごいんだなあと思う。
目立ったり周りから注目されたりするのは苦手だけど…応援してもらえるのはやっぱり嬉しい。

「フィルー」
「あ、先輩!」

廊下の先にいたボニー先輩をはじめ、超新星の先輩たちのもとに駆け寄った。
ボニー先輩はバンド内は言い合いばっかりだなんて笑っていたけど、ずっと一緒にいるし仲が良いんだろうなと私は思っている。

「昨日はお疲れさん。ゲリラ良かったじゃん、いい感じだったよ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」

昨日のライブには超新星の先輩全員が聴きに来てくれたんだ。
ボニー先輩とアプー先輩は最前列で盛り上げてくれたし、他の三人の先輩は後ろの方だったけど…嫌そうな顔はしてなかったはずだ。

「やはり白ひげには勿体ない。おれたちと一緒にやる方が絶対…」
「お、お気持ちだけ受け取っておきます。」
「楽しかっただろ。そうだキッド、敵情視察した感想はどうだったんだ?教えてやれよ。」
「!は、初めてのゲリラだったにしてはまあまあだったんじゃねえの!?けど勘違いすんじゃねえぞ!お前らなんておれたちに比べりゃ下の下の下の」
「ありがとうございます…。」

…多分キッド先輩なりに褒めてくれているんだと思いたい。
本当に嫌ってたらこうやって飴なんてくれないだろうし…あ、今日はソーダ味だ。

「ホーキンス、あんたも何か言ってやりなよ。」
「…気を付けろ。」

いつの間にか占いを始めていたらしいホーキンス先輩は、私の目の前に一枚のカードを差し出した。
そのカードに描かれていたのは、とても不吉な死神の絵。

「今日お前が怪我をする確率は100%だ。」

ーー


(怪我、けが…??)

ホーキンス先輩の占いはよく当たると校内でも評判だ。
同じ軽音楽部だし、ロー先輩事件もあったからホーキンス先輩にはそれなりに会うんだけど、その度に占いをしてくれる…というより気がついたら勝手に占われている。
でも100%と言われたのは今回が初めてだなあ。
とりあえず怪我しないように気を付け…あれ?

「あんたがフィル?」

私の行き先を塞ぐように立っていたのは四人の女生徒。
上履きのラインの色がバンドの先輩たちと同じだから、きっと三年生の先輩だ。

「は、はい、そうですけど…」
「フツーじゃない。」
「しかも一年って…。」
「何でこんなのが…。」

何となくわかることは、私のことを良く思ってないというか…私のことが嫌い?なんだということ。
その先輩たちは私のことをじろじろと見ながら横切っていったと思ったら、突然後ろから突き飛ばされた。

「ッ!」
「調子のってんじゃねえよ。下手くそ。」

振り返って見た先輩たちは明らかに私を睨んでいる。
それだけ言い残すと、先輩たちは私を置いてどこかへ行ってしまった。

(痛い…)

廊下に打ち付けた手や足がじくりと痛んだ。
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