「…」
「うーん…」
「あー…」
「…いや、よかった!すげえよかった、けど、うん、」
「…」
「(な、何でこんな微妙な反応なんだ…!?)」

あれから30分もしないうちに始まったお試し会。
憧れの先輩たちの演奏で大好きな曲を歌えるんだから…もう最高に楽しかったんだ!
で、終わったあとに感想を聞こうと思って後ろを向いたらこの反応。
前で聴いていた先輩たちは?
そう思って振り返ってみても、何か言いかねているように黙っているジョズ先輩。

「い、いぞうせんぱい、あの…」
「…ミスったな。」

はあ、とため息まじりにそう言いながらイゾウ先輩は視線を横に逃がして。
戸惑う私に先輩はこう続けた。

「曲の雰囲気と合ってねえ。」

ーー


「ボニー先輩聞いてください…っ!」
「ど、どーしたフィル?大丈夫か?泣きそうじゃん。」

翌日の昼休み。
廊下を歩いている途中誰かに呼ばれて振り向くと、そこには笑って手を振るボニー先輩の姿が。
話を誰かに聞いてほしくてたまらなかった私はすぐさま駆け寄った。
ああ、心配してくれる先輩もかわいい…。

「昨日新曲を試しで合わせたんですけど先輩たちの反応が今一つだったんです…!」
「ふんふん、何て言われたんだ?」
「…曲の雰囲気と合ってないって言われました。」

言葉を失うって言うのはあのときみたいなことを言うんだろうな…。
いや、まあイゾウ先輩だしハッキリ言ってもらうのはいいんですけど、でもちょっとショックが大きかったというか何というか…。

「雰囲気かあ…。新曲って何やったんだ?」
「『prison』の『love poison』です…。」
「あー、あれね。サディちゃんの歌格好いいしエロいもんなー。うちのローとかなら合うんだろうけど。」

先輩に言われて想像してみる。
ああ、確かにロー先輩なら合いそうですね…自分の曲のように歌いそうだよ。

「サディちゃんとフィルのイメージって逆だし…声とか歌い方とかで本人でるじゃんか。それで余計に違和感あったんじゃねえ?」
「やっぱりそうですか…。」

あのあと、ショックを隠しきれない私を先輩たちは必死にフォローしてくれたんだ。
けど好きな曲だったし久しぶりの部活で気合い入ってたからちょっと、ね…。
その人のイメージって結構影響しちゃうのか…はあ、ヨーキさんごめんなさい…がんばるとか言っちゃいましたけど早速くじけそうです。

「元気だせって。ほら、あの曲って好きで好きでたまらない相手に向けた歌だろ?」
「そ、そうですけど…?」
「フィルもそういうヤツつくれば?そしたら少しは雰囲気でるかもしれねえぞ?」
「えっ」

そういうやつって…す、好きな人ってこと!?
ボニー先輩!そういう話を急にしないでください…!

「お、赤くなっちゃってカワイーな。けどこのくらいで赤くなってるようじゃサディちゃんにはほど遠いな。」
「あ、あう…」
「、予鈴だ。次移動教室だからそろそろ行くな。部活がんばりなよ。」
「はい。…先輩、ありがとうございました。」

先輩と話せたおかげで少し元気になれた気がする。
…けど。

「好きなひと、かあ…。」
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