「…マルコ先輩、この解き方で合ってますか?」
「…ああ、これは応用問題だから公式を使う前にやることがあるんだよい。何だと思う?」
「えっと……あっ!」
「くくっ、もう解けるだろい。」
今日もどこか眠そうなマルコ先輩を隣に勉強会はもう4回目を数えている。
私が問題を解いている間マルコ先輩は基本黙って見てるけど、こうやって私が訊いたり悩んでいてどうしても進まないときはヒントをくれて、私にちゃんと考えさせてくれるんだ。
何か家庭教師も出来そうだよね、マルコ先輩って…。
「…できた!これで合ってますか?」
「上出来だい。じゃあ次行くぞ。」
「なあハルタ、電子辞書貸してくれよ。」
「いいよ、その代わり明日の昼奢りね。」
「ええ!?じゃあ無し、今の無し!」
「あはは、冗談に決まってるじゃん。」
後ろではエース先輩とハルタ先輩が宿題をしている。
初回こそ私の教科書を見ていたエース先輩なんだけど、2回目以降ハルタ先輩と静かに勉強してる姿を見て最初はびっくりした(本人にはもちろん言えない)。
でもそれが3日も続くとさすがに慣れて私たし…私が思っていたよりもエース先輩は真面目だったみたい。
「イゾウ、ここの空いた小節はどうする。」
「そうだな…適当にソロでも入れるか。エースならアドリブでも何でもするだろ。」
ジョズ先輩とイゾウ先輩は譜面の書き換え。
時々恐ろしい会話が聞こえたりもするけど、ほとんどは私にはわからない単語が並ぶのでただすごいなと思いつつ見ている。
それから、あともうひとりの先輩なんだけど…。
「…あ、あの…サッチ先輩、」
「んー?」
「ずっと見てるだけですけど…いい加減飽きないんですか?」
「んー、飽きねえよ?ほら、続けて。」
サッチ先輩はこの勉強会が始まってからというもの、ずっと私の勉強を見てるだけなのだ。
マルコ先輩のように教えるわけではなく、本当にただ見てるだけ。
正面からじっと視線を送られて続けて4日目、どうにもこればっかりは慣れない。
…何がそんなに面白くて見てるんだろう、私だったら絶対飽きると思うけどなあ…。
「あの…これでどうですか?」
「正解。…何だい、思ってたよりも解ってるじゃねえか。」
「やった!次行きましょ、次!」
「当たり前だ。じゃあ…、くくっ」
あれ?マルコ先輩どうしたんだろ。
急に笑いだして…私のやる気があったのがそんなに可笑しかったのかなあ。
「マルコ先輩?」
「…いや、何でもねえよい。」
その後に聞こえたのは、ハルタ先輩とイゾウ先輩が笑う声だった。