「それじゃあ…この前の小テストでも見直していこうかねい。」
「は、はいっ。」

勉強会第1回目。
場所はもちろん3年生の教室で、いつもと変わらず眠そうなマルコ先輩は欠伸をひとつして私の隣に座った。

「…フィル、この感じだと公式から覚え直してく必要がありそうなんだが…。」
「うっ、…ごめんなさい。」
「くくっ。…まあそれさえ覚えちまったらあとはなんとかなるだろい。じゃあ…」

マルコ先輩にこうやって関わってもらうの初めてかも…。
部活の時はほとんどイゾウ先輩だし、他の先輩に教えてもらったとしてもサッチ先輩だもんね。
何か…マルコ先輩ってハルタ先輩やジョズ先輩とは違う癒しオーラが出てる気がするなあ…いや、これはただ単にだるそうなだけか…。

「フィル、国語の教科書ちょっと見せてね。…うわ、そういえばこんなのやってたなあ。」
「おれにも見せて。…おー、懐かしいな!」
「なあ、イゾウとジョズがやってるのって…」
「ああ。新曲だぞ。」
「この時間、暇で仕方ねえからな。」
「…別におれたちは帰っていいんじゃねえの?」
「…どこでやっても同じだ。それにジョズがいた方が都合がいいしな。」
「ひひっ、そうですか。」

マルコ先輩と勉強する私の後ろには、1年生の教科書を読み返して懐かしんでいるハルタ先輩とエース先輩。
私の正面にはサッチ先輩がいて私たちの勉強の様子を見ているし、その近くの席では譜面の書きかえをしているジョズ先輩とイゾウ先輩がいる。
本当ならマルコ先輩以外は帰ってもいいってなったんだけど、どの先輩も残ってくれてるんだ。
まあ私が欠点とると先輩たち困るしあの点数だもんね、心配するのも無理ないか…。

「…さっき教えた公式使ってここの問題解いてみな、……そう。やればできんじゃねえかい。」

や…やった!
嬉しくて先輩の方を見ると、先輩も緩く笑ってくれた。
きっとマルコ先輩はイゾウ先輩とサッチ先輩のちょうど真ん中くらい。
厳しく教えるって訳でもないし、けど必要以上に甘やかさない。
マルコ先輩って先生役適任だったのかも…。

ーー


「マルコ先輩、ありがとうございました。」
「気にすんなよい、フィルは欠点とらねえようにすることだけ考えな。」
「…はい。」
「くくっ。」

1日目は無事終了。
教え方はわかりやすいし、先輩に教えてもらってるから余計にがんばろうって思えるんだ。

「英語だったらぼくが先生役できたんだけどなあ、残念。」

少しつまらなさそうなハルタ先輩。
ハルタ先輩が先生役か…あの笑顔でビシバシ指摘されたらすごくへこみそうだな…。

「ハルタ先輩って英語が得意なんですか?」
「そうだよ。フィル、この際ついでに英語も教えてあげようか?」
「え!そ、そんなの悪いですよ!それに数学で手一杯です!」

英語…ハルタ先輩格好いいなあ。
それにマルコ先輩は数学でしょ?他の先輩はどうなのかな…。

「…あの、他の先輩たちの得意な教科って何ですか?」
「おれは体育!球技大会とかすげえんだぜ!」

エース先輩はどの種目でも引っ張りだこなんだろうな、球技だけじゃなくて陸上とか…体育祭なんてきっと大活躍しそうだよね。

「おれは全部いけるけど…ま、家庭科かな。イゾウは?」
「国語…特に古文だな。ジョズはどうだ。」
「おれは歴史だな。」

サッチ先輩は万能だな…でもそれがしっくりくるからすごいよ。
イゾウ先輩は古文かあ…うん似合う、似合いすぎだ。
何か先輩は艶っぽいからイメージに合ってるよね。
ジョズ先輩は歴史…うん、あのややこしい時事とか人物名とかすらすら言えちゃいそうだもん。

「一通りどの教科も先生役いるみたいだね。」
「よかったじゃねえかいフィル、これでどの教科が苦手でも安心だねい。」

できれば今後お世話にならないようにしたいです。
私がためらいがちに言うと、先輩たちはみんな笑った。

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