「…よし、この前の小テスト返すぞー。」
あー、やっぱり授業時間が一番平和だな。
登下校と休み時間はロー先輩関連で落ち着かないし、放課後は鬼の先輩にしごかれるからね。
こう平和だと窓際だからぽかぽかして余計眠たくなる…
「…フィル、」
「、はい。」
数学か…苦手なんだよなあ。
それにこのテスト難しくてあんまり解けなかった記憶…が!?
(に、25点…っ!!)
うわー…やっちゃったよこれ。
まあこのテスト難しかったし、たかが小テストだしね、うん。
「うわ、フィルそれまずいって…。」
「う"、…まあ中間テストでがんばればいいし、大丈夫だよ。」
「でも再来週でしょ?それにこの学校って…」
「おーし、聞けよー!再来週には中間テストがあるからな、今回30点以下のやつは相当気を付けとかないとやばいぞ!ちなみにわかってると思うが、中間テストで1教科でも欠点とったやつは部活動禁止だから注意しとけよ!」
…はいいっ!?
ちょ、先生それ初耳なんですけど!?
「ね、ねえ!今のって本当!?」
「そ、そうだけど…。」
「ちなみに欠点って…」
「…30点以下。」
…これは結構ピンチなんじゃないか?
中間テストで数学欠点とったら部活禁止なんでしょ?
「部活禁止期間って…どれくらい?」
「…追試受かるまで。」
…もし、もしだよ?数学欠点とって部活禁止になったら…だ、だめだ!絶対だめ!!
あの先輩に殺される…っ!!
ーー
ー
「…おーい、フィル?生きてるかー?」
放課後。
机にばたりと倒れ込んでいる私をエース先輩が指でつつく。
「…もうだめです。」
「フィルって面白いよね。見てて飽きないや。」
「…光栄です。」
「フィルちゃんどうした?ほら、悩みごとなら聞くぜ?」
ああ、サッチ先輩の笑顔に何だか罪悪感感じてきちゃったよ…。
これは完全に自分の問題なんだけど…一応言ってみようかな…。
「…今日、数学の小テストが返ってきたんです。」
「うん、それで?」
「……25点でした。」
…やっぱりハルタ先輩とイゾウ先輩は笑いますよね、わかってましたけどね。
他の先輩は一応堪えてくれてるけど…堪えきれてないですね、うん。
「…それで、もうすぐ中間テストあるじゃないですか。」
「…ああ、欠点とらないか心配してんのかい。」
「確か欠点とったやつは追試受かるまで部活禁止だったか?…まあおれたちには縁のねえ話だがな。」
イゾウ先輩それは嫌みですか、25点とって焦ってる私への嫌みですか。
「この学校は文武両道を掲げているからな、仕方ないことだが…。」
「でもフィル、それって本気で危ねえんじゃねえの?」
「…危ないです。」
うん、本当に危ないんだよ…。
でも…もし欠点とっちゃったらどうなるのかな。
「…あの、イゾウ先輩。」
「何だ。」
「もし、もしですよ?もしも」
「欠点はとるな。」
「……はい。」
退路は完全に絶たれたね、欠点とるなんて道は選べないんだね。
本当に参ったなあ、私数学一番苦手なのに…
「なあ、勉強会しようぜ!」
エース先輩の一声。
突然の提案に、私はやっと顔をあげた。
「フィル、危ないのって数学だけか?」
「え?は、はい…。」
「じゃあさ、中間テストまで放課後にフィルの数学みてやろうぜ!」
私的にはすっごく嬉しい提案なんですけど…っ!
で、でも放課後って…他の先輩たちは何て言うかなあ。
特にイゾウ先輩とか反対しそうだし…。
「フィルが部活禁止になると困るしね、賛成!」
「どうせテスト期間で来週から部活はなくなるしねい。」
「ステージもないしな、問題ないだろう。」
「おれも賛成。イゾウは?」
「…欠点とられて休まれても困るしな。」
あ、ありがとうございます…っ!!
先輩たちが教えてくれるならいけそうな気がしてきたし…よし、絶対欠点とらないようにがんばらなくちゃ!
「ひひっ、じゃあ決まりだな。…で、誰が教える?」
「え?みんなで教えたらいいじゃん。」
「エース、それだとごちゃごちゃになるでしょ?誰かひとり先生役決めといた方がいいよね。」
…先生役かあ。
私は教えてもらう立場だから誰でもいいけど…先輩たちって得意な教科とかあるのかなあ。
「数学が一番得意なのは…マルコだな。」
「…おれかい?けどジョズ、おれは誰かに勉強教えたことなんてねえが…。」
「マルコなら大丈夫だろ!フィル、明日からマルコが先生な!」
ちょ、エース先輩!?
マルコ先輩まだ返事してないのに決めちゃだめですって!
「…あの、マルコ先輩…」
「ん?…ああ、おれのことなら気にすんなよい。フィルはおれでいいのか?」
マルコ先輩優しい…っ!
…いい先輩たちに出会えて本当によかったなあ。
「は、はい!…よろしくお願いします!」
「こっちこそ。まあ…あんまり期待はしねえでくれよい。」
こうして、マルコ先輩は今日からマルコ先生になった。