(帰宅部…つくってくれないかなあ。)

生徒は何らかの部活に入部しないといけない、なんて…そんな校則いらないよ。
帰ったらのんびりしたいし本読みたいし音楽聴きたいし…部活なんて興味ないもん。

「…はあ。これ、どうしよう…。」

ぴらぴらと泳がせている紙は、さっき担任の先生から渡されたもの。
紙の中央には「入部届」としっかり書かれている。
引っ込み型の私が先生に反発できるわけもなく、しぶしぶ部活見学を始めることにした。

「文化部だったら何かな…。」

体力がないから運動部なんてもっての他だ。
なら文化部系で探すしかないので、校舎内を散策。
ここの学校の校舎はすごく広くて階もたくさんあるから、見てまわるのは結構大変で。
吹奏楽は体力いるって聞くし、調理部は…つくるより食べる方が好きだなあ。
美術部に書道部に演劇部に…、やっぱりどれも興味がわかない。

「…、あれ?」

ここ、どこだ?
適当にふらふらしてたから、今自分がいる場所がわからなくなっちゃった。
入学したばっかりだし校舎内のことはよく知らない。
さらに残念なことに私は方向音痴。
入る部活もまだ決めてないのにその上迷子って…。
うーん、とりあえず階段を探そ…

「、おっ。」
「!!、わっ!」

せ、先輩だ!
何で茶髪は許されて帰宅部は許されないんだ…。
この人、大きいし3年生かなあ?

「…きみ、1年生?」

う、うわー!?
先輩に話しかけられちゃったよ!
緊張しすぎて声がでない…!
必死に首を縦に振って、どうにか返答する私。

「1年の教室って2階だろ?ここ6階だし、空き教室くらいしかねえよ?」
「えっ、」

…6階まで来ちゃってたんだ。
それに、文化部の部室があるのは5階までだったような気がする。
やたらと静かなわけだよ…。

「あ、もしかして迷子?」
「!!や、別に、」
「ははっ。まあこの校舎広いし、新入生にはわかりにくいか。」

わ、笑われた!?
しかも迷子ってばれちゃったし恥ずかしすぎる。
うう、いっそこの場から立ち去りたい…。

「…それ、入部届け?まだ決めてねえの?」

私が手に持っていた荷物に気づいた先輩。
指で挟んでいた部分は少ししわになってしまっている。
こくりと小さくうなずいた私に、先輩は少し考えるしぐさをして。

「そっか、それならこっち来いよ!」

そう言いながらにっと笑った先輩は、くるっと体を反転させてどんどん廊下を進んでいく。
私はやっぱり断れなくて、おとなしく先輩の後ろをついていくことにした。

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