「とうちゃーく!」

取り込んだ洗濯物を畳んでいると、通路の方から知らない人の声が聞こえてきた。
声から想像するに、男性でそこまで若くはない気がする。
もしかして503号室の人が帰ってきたんだろうか。
そう思ったけど、続いて聞こえてきた会話に私の予想はハズレだとわかった。

「もう少し声落とせよい。」
「いいじゃねえか、この階住んでんのってほぼお前だけだし。」

どうやらこの声の主はマルコさんの知り合いのようだ。
話し方から、ふたりが気の知れている仲なんじゃないかなあと想像できる。
そして私が新しく越してきたことを知らないみたいで…迷惑はかけていないはずだけど何だか申し訳ない。

「いや、最近隣の部屋に引っ越してきたんだよい。窓空いてたと思うから今日いるぞ。だから静かに」
「マジか!ガール、レディ、その他のどれだ。今すぐ答えろ。」

選択肢に偏りがあるんですがそれは…。
マルコさんからも中々返答がないし、きっとその男性に冷たい視線を向けている…ような気がする。

「焦らすなって!早く答えろ!」
「……ガール?いや、レディ…」
「ほっほう!そりゃいい!ではさっそく友人として挨拶を…」
「アホか!止めろよい!」
「はあ…マルコ、止めても無駄だ。おれは愛に生きる男だぜ?常に出会いを求めてんだよ。というわけで」

え、と思ったときには私の部屋の呼び出し音が鳴っていて。
まさか本気で挨拶に来るなんて思わず動揺したけど、居留守を使うのも気が引けてインターホンの前まで移動した。
マルコさんの知り合いって軟派な人なのかなあ…。

「は、はい、」
「こんにちはー。隣のマルコが世話になってます、おれは友人の゛!?」
「フィル!出なくていいよい!無視だ!無視しろ!!」

マルコさんの変わりようにも驚いたけど、何だか聞いてはいけないような音が所々で聞こえて、私は返事も出来ずに固まってしまった。
い、今のマルコさんも中々に近所迷惑だと思いますよ…?

「おら!さっさと入れよい!」

マルコさんって意外と気性が荒いのかなあ…?
ドア越しにずるずると何かが引きずられる音が聞こえたけど、それが何なのかは考えない方がいいんだろうと思った。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -