「フィルちゃんも見たいとこあったら言っていいからな?」

駐車場に車を停めて、たくさんのお店が建ち並ぶ道をふたりで歩く。
休日だからか周りは家族連れや友だち同士で遊びに来ている人、それに私たちと同じようなカッ……う、うん、そういう人たちがたくさんいる。
サッチさんと会うのは学園祭以来。
久しぶりに会ったサッチさんは前よりももっと格好よく見えて、さっきからまともに目を合わせることができていない。
けど気を抜いてしまうとつい見とれてしまいそうで…これもサッチさんが好きだからだろうなと思う。

「!は、はい。」

サッチさんは顔や体格もそうだけど…今日の髪型も特徴的だからすれ違う人たちの目をひいているのがわかるんだ。
それは同性からも、もちろん異性からも。
けどサッチさんは慣れているのか、特に気にする様子もなく普段通り私に話しかけてきて。
わ、私なんかが隣にいて本当にいいのかな…。

「もー緊張しすぎ。」

半分は困ったような顔でサッチさんが笑う。
付き合う前に一緒に行った買い物はここまで緊張しなかったのに…関係が変わるとそれだけでこんなにもサッチさんを意識してしまうんだ。

「だって初めてですし、その、」
「まあかわいいからいいけど。あ、あの店見ていい?」

だ、だからそういうこと言わないでください!
心の中で不満を言いつつうなずくと、ありがとうと笑うサッチさんと一緒にお店の中へ。
雑貨屋さんだ。
中はシンプルだけどおしゃれで、ぱっと見たところ食器なんかが多く置いてある。

「…お皿が欲しいんですか?」
「んー、皿っていうか…食器?持ってるんだけど欲しくなる。まあ大抵見るだけなんだけどさ。」

言いながらお皿をひとつ手に取っているサッチさんは楽しそう。
そういえば喫茶店の食器もおしゃれだったなあ。
あれって誰かが選んでるのかな、サッチさん?それとも他の人?
…あ、このお皿かわいい。

「わかります。私もコップとかよく見ちゃいますし…。」
「そうなんだ。じゃあおれと一緒だな。」

急に笑顔を向けられてどきりとする。
それにサッチさんと一緒、って…ば!ばか!私ってば何ひとり喜んでるの!

「前一緒に買い物行ったろ?あのときと同じ感じでいいんだってば。」

サッチさんは手に持っていたお皿を戻すと、次はガラスのコップを手に取ってくるりと見始めた。
ちらりと見てきたその顔はやっぱり楽しそう。
でも今回はきっと私のことで笑っているんだと解釈する。

「それができないからこんなことになってるんです…。あの、」
「ん?」
「今日のこと友だちに話したんです。一緒に出掛けるって。」

まあこうなるだろうとは思ってたけど…話したらそれはもう存分に騒がれた。
初デートだとか、手繋ぐのとか、服決めたとか…思い出すだけでも恥ずかしくなる。

「何て言われた?」
「…色々です。」
「何だよー、じゃあ簡単に言うと?」
「…がんばってこい、って。」

それはもう満面の笑みで。
がんばれなんて言われても…すでにいっぱいいっぱいなのにこれ以上どうしたらいいんだろう。

「くくっ、じゃあ…そうしてもらおうかな。」

くつくつと笑うサッチさんに楽しんでますかと訊くと、もちろんと返された。
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