「やっと終わった…!」

机の上には完成したレポートと、黄色のライトが点滅する携帯。
誰からかわかりやすいように設定を変えてみたんだ。
最近じゃマルコさんよりサッチさんとやりとりをしている方が多い気がする。
でもマルコさんとの回数は減ってるわけじゃないし単純にサッチさんとの回数が増えたんだと思うんだけど…本当、出会った頃からは想像も出来なかったよね。
そんなことを考えながら伸びをひとつして携帯を手に取る。
急ぎの用件じゃないといいけど…

「、電話…」

サッチさん?
そう思って見たディスプレイに表示されていたのはもうひとりの男性の名前。
…そういえばメールよりも電話の方が楽でいいって前言ってたなあ。

「はい、フィルです。」
「おれだ。今大丈夫だったかい。」
「ちょうど課題が終わったところです!」
「お疲れさん、大学生も大変だねい。」

マルコさんにしてもサッチさんにしても、電話を掛けてきたときは必ずと言っていいほど私の都合を聞いてくれる。
当たり前なのかもしれないけど…やっぱり優しいなって思うんだ。

「どうしたんです?」
「ああ、次の土曜におれの家で集まるからフィルもどうかと思ってな。今回はイゾウとハルタもいるんだよい。」
「い、いいんですか?ぜひ…、!」

言いかけて思い出す。
その日はサッチさんと約束をしてた日だ!

「…都合、悪いのかい?」
「、ちょっと…。」
「いつもみてえな感じだから途中参加でも構わねえが…。」

いつもの感じってことは夕方くらいから始まるんだよね。
約束は十一時だし、そんなに遅くまで出掛けるってことはないだろうから大丈夫だとは思うんだけど…そもそもサッチさんはどうしたんだろう?

「あの、ちなみにサッチさんってその日は…」
「サッチかい?ああ、あいつも来るが…予定があるとかで少し遅れるらしいよい。それがどうかしたか?」

サッチさんは遅れるって言ったんだ。
それにマルコさんは私のことは聞いてないみたいだし…ど、どうしよう、これって言わない方がいいのかな。
で、でも付き添いで着いていくだけだし隠すようなことじゃない…よね?

「そ、その日サッチさんと出掛けるんです、けど…」
「…サッチと?」
「!あ、いや、サッチさんが行きたい場所があるみたいなんですけど女の人ばっかりだから行きにくいらしくて!それで着いてきてくれないかって、」
「……」

む、無言って…何か変な誤解されちゃった!?
恥ずかしいとかよりも私なんかと誤解されたサッチさんに申し訳ないというか…サ、サッチさんごめんなさい!

「…な、何か聞いてませんか?」
「まあ…サッチに声かけたのはエースだったからな、おれは直接聞いてねえんだよい。」
「そうなんですか。」
「フィルはそのあと予定あんのかい?特にねえならサッチと一緒に来いよい。」
「はい、ありがとうございます。」

サッチさんは私が行くことは知らないよね。
このあと返信しようと思ってたしその時に伝えとこうかな…早い方がいいだろうし。

「疲れてるとこ悪かったな、ゆっくり休めよい。」
「 、いえ!お、おやすみなさい、」
「おやすみ。」

……な、何でだろ、マルコさんにおやすみって言われるとちょっと落ち着かないな。
それにしても今回はハルタさんとイゾウさんも来るんだ、楽しみ…あ、どうせならクッキーたくさん焼いて持っていこうかなあ。
そんなに手間もかからないし、いつもお邪魔してるもんね。
、そうだ!サッチさんのメール…

『土曜って夜空いてる?マルコの家で集まるんだけど、もし空いてるならそのまま一緒にどうかなって。』

「……何で言わなかったのかなあ。」
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