今はサッチさんと一緒に、サッチさん一押しの喫茶店に向かう途中。
実はそのお店、ケーキセットがすごくおいしいって話で私の読んでる雑誌でも取りあげられてたんだ。
そうでなくてもあの料理上手なサッチさんがおすすめしてくれるんだもん、絶対間違いないよね!
だからすっごく楽しみで仕方がない。
けど、それ以上に…

「ひひっ、いい加減楽にしたら?」
「!は、はい、」

な、何でこんなに緊張するの!?
普段とか前送ってもらった時は普通だったのに…何で!?
これじゃあ初めて迎えに来てもらったときと一緒だよ…!

「フィルちゃん、今日ありがとな。」
「、え?」

内心そわそわと落ち着かない私に声をかけてきたサッチさん。
でも私はお礼を言われるようなことなんて何にもしてないし、むしろ連れていってもらう側の私が言う台詞だと思う。

「今日来てくれただろ?今から行く店な、女性客ばっかなんだよ。いねえってわけじゃねえんだろうけど男の客ってやっぱ珍しいみたいでさ…前に一人で行って失敗したんだよな。」

サッチさんはその時のことを思い出しているらしく、困ったように笑っている。
そういえば…雑誌にも似たようなことが書いてあった気がするなあ。
女の人ばっかりの中にサッチさんかあ……少し、いや大分目立つかも…

「あ、今笑っただろ。」
「!そ、そんなことないです、」
「いーや笑ったね、おれ見たもん。」
「あれ?で、でも運転中でさっきもずっと前見てて…」

サッチさんはずっと前を向いていた。
対する私はサッチさんの方を見ていたから、サッチさんが私を見たのなら目が合うはずだ。
でも私の記憶じゃ目は合わなかったし、い、一応ばれないと思ってたんだけど…。

「んー、フィルちゃんは車運転しねえからわかんねえか。」
「え?」
「まあとにかく、…笑っただろ?」

にやりと笑みをつくったサッチさんと今度ばかりは目が合ってしまい、これはごまかせそうにないと私は反射的に視線を外してしまった。
そんな私の反応を見て、サッチさんはくつくつと笑う。

「…お、そろそろだな。」

もうすぐ着くぜ。
サッチさんの言葉の後に私の目に入ってきたのは赤レンガが特徴の建物。
外観だけを見てもすごくおしゃれで落ち着いた雰囲気を感じる。

「はーい、到着。」
「ありがとうございます。」

お礼を言って車から下りれば、さらに増すわくわく感。
サッチさんの一押しのケーキかあ…楽しみ!

「嬉しそうだな。」
「当然です!サッチさんは?」
「ひひっ、フィルちゃんと一緒。」

そう笑って、サッチさんはドアを開けてくれた。
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