ドライヤーで髪を乾かす私の意識はアキに無理矢理渡された紙切れ一枚に持っていかれている。
「本人たちには見せられないよね…。」
乾かし終わったあとはもちろんベッドへ。
太陽の光をたくさん浴びたふかふかの布団に受け止められるこの瞬間はやっぱり幸せだ。
普段なら気持ちよすぎて寝てしまいそうになるんだろうけど…
「…『大人の魅力。メールや電話はもちろん、家に何度か呼ばれるだけでなくデー…』な、何これ!?」
まあ折角だから見てみようかな。
そんな軽い気持ちで読んだのは、アキが書いたマルコさんについての紹介文。
私からの情報を基に書かれたであろうそれは、そうそう流し読み出来るものではない。
(だ、だからデートじゃないって…!)
そういえばサッチさんにもそう言われたことがあったような気が…。
マルコさんも多分(というか絶対)そんなつもりはないんだろうけど…他の人からすればそう見えるのかな。
「…で、でもだよ!?付き合ってるわけじゃないしマルコさんは憧れで友だちで…って何慌ててるんだ私!」
これじゃあ前と同じだ!
ぱたぱたと手で顔を扇ぎ、一時中断。
しばらくして顔の熱が引いたのを確認した後、今度は残りの人たちの紹介文に目を通すことに。
『運命的な出会い方。気さくで話しやすく、料理の腕はピカ一。胃袋を完全につかまれていて…』
う、運命的って…まあ確かにある意味運命的だったとは思うけど、胃袋のところも否定出来ないけど!
『元気で明るく、笑顔がよく似合う。歳は二十と近く、最近距離を縮めてきたダークホー…』
…こんな言い方絶対してないからね。
どうやったらこんな解釈になるんだろ…。
『かわいい顔して結構なやり手。口が達者で、あの笑顔には誰だってオトされ…』
…も、もう突っ込むのやめようかな。
そういえば友だちもハルタさんとイゾウさんには会ってるんだよね。
きっと喋ったのはハルタさんなんだろうけど…。
『クールで口数が少ない分、妖艶な色香が際立つ。これから参入してくる可能性大…』
…何に参入してくるんですか、何に。
突っ込むのをやめようとは思いつつも結局やってしまった。
さわりの部分を読んだだけでこれだしね…全文なんて読んでたら絶対に突っ込み疲れしそうだ。
溜まってしまった息を吐き出し、問題の紙は机の上に裏返しにして伏せることにする。
なのに。
仰向けになってぼんやりと思い返してしまったのは、宿題のことで。
訊くこと自体はいいとしてもそれで変に勘違いされちゃったら…う、うん、とっても困る気がする。
まず恥ずかしいし…色んな意味で相手に申し訳ないよね。
「…どうやって訊こうかなあ。」
今回の悩みはさすがに相談できないよ…。
内心ため息をつきつつ、もう早く眠ってしまおうと部屋の照明を消すことにした。