「あ、サッチ!フィルが来ること何でぼくらに教えてくれなかったのさ!」
「げっ、お前ら来てたのかよ!」
「何その言い方!」
「…はあ、お前らに教えたら絶対面倒くせえことになるだろ?」
「ジョズには教えたんでしょ?ひどいなあ。」
「ジョズは無害なの!」

衝撃の事実を知らされ私が驚いているところにちょうどサッチさんが帰ってきた。
どうやらハルタさんたちはサッチさんとその友だちの…ジョズさんという人とは知り合いらしい。
ふたりが言い合いをする中ジョズさんはやれやれといった表情でため息をついているし、イゾウさんに関してはくつくつ笑ってる。
あ、頭が追い付かない…。

「…あー、フィルちゃん悪い。急に変なやつ来てびっくりしたろ?」
「い、いえ、私は別に…。」

申し訳なさそうに眉を下げて謝るサッチさん。
ハルタさんたちと会ったこともそうだけど、それよりびっくりしてることがあるんです…。

「フィル、そんなことないよね?だってぼくらは一度出会ってるし。」

ねー、と頭を傾けハルタさんはにっこり笑う。
か、かわいいんですけどそれよりいろいろ説明してください…!

「はあ!?出会ったって…聞いてねえぞ!?いつどこで!フィルちゃん本当か!?」
「ほ、本当です。三週間くらい前ですけど…ハルタさんたちが私の通ってる大学に来たんです。」
「…で、今日会うの二回目?」
「は、はい…。」

詰め寄るサッチさんに押されつつ私が認めると、サッチさんは額に手を当て何やら独り言を呟き始めた。
あー、だとかイゾウか、とか…何かまずかったのかなあ。

「どう信じた?ぼくらも無害なんだからね。」

そんなサッチさんを見て楽しそうに笑うハルタさん。
サッチさんは疲れたようにわかったと返している。

(わ、私ひとりわかってないことだらけなんですけど…!)

ふたりのやり取りを見てひとり焦る私が面白かったのか、後ろから喉を鳴らして笑う声が聞こえた。
イゾウさんだ。

「そろそろ嬢ちゃんに説明してやったらどうだ?気になってんだろ、いろいろ。」

その通りです…!
私を見るイゾウさんにこくこくとうなずき同意すると、ふたり揃って苦笑された。
でも謝ってくれてるみたい。

「あー…何から話しようか。」
「フィルには名刺渡したよ。ここが何でも屋ってことも言ってある。」
「おれらの関係は…知らねえよな。フィルちゃん、ちょっと長くなるけどごめんな?まず…」

サッチさんとハルタさんの話はこう。
まず…この建物は喫茶店でもあるし『何でも屋 白ひげ』の会社でもあるらしくて、二階からは普通の会社みたいなつくりなんだって。
名刺に書いてあった住所ちゃんと読んでおけばよかった…。
で、サッチさんとハルタさんたちは仕事仲間。
ここにいるジョズさんも、さらにはマルコさんやエースさんも同じく白ひげの人なんだって。
一番最初マルコさんが私にサッチさんを紹介できたのはこういう理由だし、ハルタさんとイゾウさんが私のことを知ってたのはサッチさんから私のことを聞いてたからなんだ。
…でもサッチさんに大学まで教えてたかなあ?
あ、あとマルコさんが私に白ひげのことを教えなかったことも訊いてみたんだけど…

「そりゃお前らがフィルちゃんに悪影響だってマルコも思ったんだろ。まあおれでもそうしてるな。」

しみじみと言うサッチさんにもちろんハルタさんは抗議してた。
イゾウさんに至ってはダーツの矢を投げてたっけ…。

「…とりあえずこんな感じかな。あ、おれは何でも屋とここの喫茶店兼任ね。他にも仲間がいるからそいつらと交代でやってるってわけ。」
「フィル、大体わかってもらえた?」
「は、はい。」

たくさん情報が入ってきたけど…これですっきりした気分。
むしろサッチさんたちのことを教えてもらって嬉しかったな。

「よかった。じゃあサッチ、お腹空いちゃったからフルーツサンドよろしく。」
「はあ!?今からおれはフィルちゃんに特別メニューつくるの。」
「サッチなら余裕でしょ。それにフィルも食べたいよね?」

ハルタさんお得意の笑顔ですっごくおいしいよと付け加えられて。
どきりとしてしまい固い動きで首を一度だけ縦に振る。

「…ハルタ、フィルちゃん巻き込むとか卑怯だぞ?」
「あはは。ほら早く、ふたりで大人しく待ってるからさ。」
「はいはい、わかりましたー。」

そう言って店の奥へと行くサッチさんをハルタさんはやけに楽しそうな表情で見送っていた。
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