「フィル久しぶり!待ってたぜ。」
「こ、こんばんは。エースさん、お久しぶりです。」

マルコさんから二回目のお誘いがあったのは一週間前。
前回のお誘いからは一ヶ月くらい経ったかな。
エースさんがもっと話がしたいと言ってくれているらしく、素直に嬉しかったのでふたつ返事で了承した。
場所は前回と同じでマルコさんの家。
今日は大学の授業があったので私だけ少し遅れて参加となる。
一番に出迎えてくれたエースさんの元気のよさに少しだけびっくりしてしまった。

「…フィル、何か忘れてねえ?」
「、何ですか?」
「け い ご!やっぱり忘れてる!」
「!あ、いや、」

そ、そういえば敬語禁止って言われてたんだ!
エースさんは話しやすいんだけど…でも年上の人だしやっぱり反射的に敬語になっちゃうんだよね。

「エース、フィルが困ってるじゃねえかい。馴れるまで待ってやれって言ったろい?」
「あ、そうだったな。…ってフィル、どうした?」
「!…な、何でもないです!」

マルコさんのシャツ姿が様になりすぎで見とれてましたなんて言えるわけない…!
お、落ち着け私…マルコさんの着こなしのすごさはもとからだしいちいち気にしてちゃだめだ!

「荷物持ってやるよ。靴脱ぎにくいだろ?」
「、ありがとうございます。」

お礼を言ったら、真似したくなるくらい気持ちのいい笑顔で返された。
私には兄弟がいないから歳が近くてよく気にかけてくれるエースさんはお兄ちゃんみたいだなって思う。
部屋にお邪魔するとそこには料理を並べているサッチさんの姿。
量も多いし品数も多いんだけど…何より全部おいしそうなんだ。
こ、これひとりでつくったのかな…。

「おー、待ってたぜ。」
「こ、こんばんはサッチさん。」

ひとつの場所だけ圧倒的に盛り付け量が多いのが目にとまる。
きっとエースさんの席だ。

「授業お疲れさん。…フィルちゃんさ、今日食べたい?」

玉子焼き。
小声で付け加えられ、たぶん分かりやすいくらい嬉しそうな顔をしてしまったんだと思う。

「…ははっ、あとで焼きたて出してやるよ。」

まだ返事もしてないのにくしゃりと笑って返された。
恥ずかしかったけど、でも嬉しさの方がずっと強くて。

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
「サッチおれも!」
「おれも。」
「聞こえてたのかよ!…ま、ちゃんとつくってやるって。」

私完全に胃袋つかまれちゃった気がするなあ…。
…で、でもサッチさんの料理本当においしいんだもん、仕方ないよ!

「なあ、揃ったしそろそろ始めようぜ!」

すでに着席しているエースさんの一声。
早く食べたいという気持ちの表れか手にはお箸が準備されている。
お腹空いたの、我慢してくれてたんだろうな。
ばれないように小さく笑って私も席に着くことにした。
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