「えっと…私より少し背が高くてかわいい感じの金髪の青年と、もうひとりの人は黒髪できれいな顔立ちの男性でしたけど…。」

何がどうなってやがる。
…そういや前も同じようなことがあったな。
昨日フィルから話を聞いたときはさすがに返事ができなかった。
名前を呼ばれ「よくは知らねえが気を付けといて損はねえだろ」とだけ返しておいたが…こいつらが何で彼女にたどり着いたのかはさっぱりだった。

「なーんだ、もう情報いってたの?」
「昨日の今日じゃねえか。面白くねえな。」

このまま何かするつもりだったんだろうか。
あからさまにつまらない、といった言動をとるふたりはおれの同僚なわけで。

「…偶然電話したとき彼女から聞いたんだよい。」

早いうちに聞けてよかったような、そうでなかったような。
この先高確率で何かに巻き込まれるであろう彼女が少しばかり不憫に思えてくる。

「へー!マルコ、あの子と電話なんてするんだ。やっぱりお気に入りなんだね。」
「明日は槍でも降るんじゃねえか?」

言い返したいことはあるがこいつらがさらっと失礼なことを言ってくるのは日常茶飯事、いちいち気にしてたらきりがない。
やっぱりってことは…誰かからおれと彼女の話を聞いてたってことになる。
おれと彼女が知り合いってことを知ってるやつはふたりしかいないが、ひとりは即除外だ。
エースがこういう話をするとは思えねえし、それこそ槍が降るような気がする。

「…サッチから聞いたのかい。」
「ピンポーン!でも話をとばしすぎだよ。」
「…これでも苦労したんだぜ?何せ嬢ちゃんの名前しかわからなかったんだ、大学名までたどり着くのに二時間もかかっちまった。」

それは冗談のつもりなのかと聞き返したいが、本気で言っていることがわかっているので何も返しはしない。
…名前だけで調べあげたところに関してはさすがだと思う。

「会うのは我慢してたんだよ?サッチがまたその子と会うって言ってたしね。で、結構日が経ったからもういいかなってことで昨日会いに行ったんだ。…それよりさ、」
「何だよい。」
「サッチはどうなのさ。やっぱりそうなの?」

…やっぱり知ってたのか。
まあサッチがどんな説明の仕方だったかは知らないが…エースじゃあるまいしこのふたりなら気づいて当然だろう。

「…まだあいつ自身気づいちゃいねえよい。」
「あはは!サッチまだ自覚してなかったんだ!」
「そりゃあ面白えな。」

ふたりが言っていることはわかるし、確かにあいつをからかうのは面白い。
それにあいつが嫉妬する姿なんてそうそう見れるものじゃなかったから楽しいとは思う。
だがおれが彼女と話すたびに嫉妬の目を向けられるこっちの身にもなってほしい。
さらに言えばあいつが自覚してないせいでその行為をへたに注意することもできないのだ。

「笑い事じゃねえよい。」
「あ、そうだったね。マルコ嫉妬されてるんでしょ?」
「…おれは普通に話してるだけだい。」
「くくっ、あいつはガキだな。」

イゾウの言う通り、前に四人で集まったときは本当にそう思った。
おれとフィルの話を遮ったときもそうだったが…あんなあからさまに不機嫌そうな顔するなんてガキのやることだ。
彼女も少し変に感じていたようだし…せめて彼女に気づかれないくらいにはしてほしい。
この先のことを考えてため息をつくと、目の前のイゾウがじっとりとおれを見ていて。
嫌な予感がしたが、すでに遅く。

「サッチのことも気にはなるが…おれはマルコ、お前のことが聞きたいねえ。」
「ぼくも!サッチから一応話は聞いたけどマルコからはまだだもんね。」

今度の標的はおれ。
おそらくサッチはフィルがおれの特別じゃないかと説明しているはず。
本人の口から聞き出したいんだろう。

「…おれは断言した覚えはねえよい。」
「そうかい。…まあ答えは決まってるようなもんだけどな。」

ああ、面倒なやつらにつかまったな。
このふたりはきっと放っておいてはくれないんだろう。
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